犬も歩けば棒に当たる。…私は何に当たる?

□上等の紅茶 苦いスコーン
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菊さんの家にやってきた。




遊びに来たわけではない。
これも、列記としたお仕事だ。
…たぶん。

私はただ、菊さんに本を届けに来ただけなのだ。
…そう、こないだ購入させたのに、店に置き忘れていった漫画を…。

「もう…何冊買ったのよ…。まぁうち的には良いんだけどね…家計が潤うし。」
そんなことを言いながら、菊さんの家の呼び鈴を押した。

「こんにちわぁ。」
「あぁ、春海さん。すいませんねぇ、わざわざ。」
「いえ、大丈夫ですよ。いつも御贔屓にしていただいて…あれ?」

入ってすぐ、いつもと違うことに気がついた。
見たことがない靴が置いてある。
これは…?

「お客さんがいらっしゃってたんですか?」
「え?…あ、はい。今イギリスの方が来ているんですよ。」

そう言ってにっこり微笑んだ菊さんの後ろから、太い眉毛の男の人が顔を出した。

「菊、何やってんだ?…ってあれ?」
「この方ですか?」
「はい。…えぇと、アーサーさん。この方は私のよく行く本屋の娘さんです。」
「どうも。水瀬春海と申します。」
「あぁ、ここに来る道の途中にあったあの店か。俺の名前はアーサー・カークランドだ。よろしくな。」
「春海さんは私の…そうですね…『二次元仲間』とでも言うのでしょうか…?」
「ッ…あぁ…そういう…。」(汗)

…カークランドさんの顔が少し青くなったのは置いといて。

外国の人かぁ。
私、初めて見た。(雑誌以外で。)
わー…やっぱかっこいいなぁ…。
金髪、碧眼だー…。

「…俺の顔に何かついてるか?」
「へっ!?あ、いえ!」

恥ずかし!!
すっごいじっくり見ちゃった!!
だってうちの店、外国人のお客さんなんて滅多に来ないし!

恥ずかしくて俯く私を見るに耐えかねたのか菊さんが私に話しかけてくれた。

「…あぁ、そうだ。春海さん。アーサーさんから紅茶のお茶っ葉を頂いたんですが、いかがですか?」
「え…良いんですか?」
「はい。折角来ていただいたんですから…。せめてもの御礼です。」
「わー!ありがとうございます!」

図々しいかな…と思いながらも、菊さんに通されるがままに家に上がり込む。
紅茶…か。

…私、実は紅茶飲んだことありません。










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