犬も歩けば棒に当たる。…私は何に当たる?

□上等の紅茶 苦いスコーン
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「…あ!菊、それ違うぞ!こうやって入れるんだ!」
「は、はい…。紅茶に関しては厳しいですよね…アーサーさん。」
「あ…はは…別に、そんなに本格的じゃなくても良いですよ…。」
「駄目だ!紅茶はだな…。」

参った…。
まさか、カークランドさんがこんなにお茶に煩い人だったとは…。
面白い人ではあるんだけど…。

「…さ、出来たぞ。飲んでみろ。」
「あ…はい。有り難うございます…。」

やっと出来たお茶に口を付ける。
茶色いお茶からは、甘い香りがした。
変わったお茶だ。
少し、甘い。

「…どうだ?」
「…美味しいです。」
「! そうか!良かった!!」

そう言って無邪気に笑うカークランドさんを見て思わず微笑んでしまう。
可愛い人だな…。
って、それは失礼か。

「…そうだ。」

何かを思い出したように、カークランドさんが荷物の中をあさりだした。
瞬間、菊さんが申し訳なさそうに(青い顔で)私の肩をつかんだ。

「な…なんですか!?」
「すみません春海さん。私、用事があったのを忘れていました。」
「え!?そうなんですか!!?」
「はい…それで、その…申し訳ないんですが、お留守番をお願いしてもいいですか?」
「私でよければ、ぜんぜんいいですよ。」
「す、すみません…。お礼はいつかまた…。」
「気にしなくてもいいですって!いってらっしゃい。」

いつもとは違う笑顔を浮かべながら、菊さんは部屋を出て行った。
急に、静かになった気がした。
…思えば、今カークランドさんと二人っきりになったわけで。
何か息苦しい。

「お、あったあった。…あれ?菊は?」
「今、用事があるって出て行きましたよ?」
「そうなのか?」
「気づかなかったんですか?」
「あぁ、子供の声がうるさくてな、」

(…あれ?菊さんの家に子供なんていたかな…?ってか、私には子供の声なんて聞こえないんだけど…。)

「ところで、何探してたんですか?」
「あぁ、そうだった。」

そういってカークランドさんが机の上に出したのは、綺麗な紙に包まれた…。

…薄黒い物体だった。





「…あの…これは?」
「これはな、スコーンといって…まぁ紅茶とよく一緒に出るお菓子だ。」
「お茶菓子…ですか?」
「ん?まあそんなもんかな。」

…それにしても、黒い。
っていうか、モザイク!
こ、これは本当にお菓子なんだろうか…。

「ほんとは菊に持ってきたんだが…水瀬…だっけか?お前にもやるよ。」
「は…はい…ありがとうございます…。」

と…とにかく。
お菓子というのだから食べれるものなんだろう。
失礼だし、ここはいただこう。


「…じゃあ、いただきます…。」

カークランドさんが見守る中、黒いスコーンを口の中に放り込んだ。














……………ガリリッ…………










噛んだ瞬間、石でもかじった様な鈍い音がした。



…大丈夫なのかな、これ。















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