犬も歩けば棒に当たる。…私は何に当たる?
□数年前から一目惚れでした
2ページ/4ページ
あの少女と会ってから1週間もたった。
俺が少女に告白したあの気持ちは、嘘ではないことが今ならわかる。
俺はあの少女に一目惚れしたのだ。
この1週間、もう一度ちゃんと少女にお礼を言いたくて、何回かあの場所に向かったが一度も会うことは無かった。
そして告白の返事を貰いたいと思っている自分が居ることもよくわかる。
正直あれがちゃんとした告白ではないことはわかってる。
それでもこのままもんもんとしているのは全然性に合わない。
はぁ、と俺らしくも無い溜息を付いて、今日もまたあの場所に向かうことにした。
今日はこの前とは正反対の、珍しく熱いくらいの晴天だ。
今日も今日とて日課になりつつある散歩を楽しみながら歩いていれば、考え事をしながらでも目的地に付くことができた。
そしてここで歩いている人々を眺めて目的のあの少女は居ないか確認して、帰る。
これが最近の日課だった。
今日もやはり居ることはない。
そうとわかっていても気持ちのどこかで期待していて、探している。
金というより銀に近い髪を見れば、自然と目で追っているのがその証拠だ。
「情けね・・・・・・」
そう小さく呟いて、いつもはもう少し居るところを今日は早く帰る。
この日課も今日でやめよう。
少女からしてみれば、俺はただの変な奴にしか見えないのだろう。
と珍しく少し、いや大分落ち込んで考える。
あの出会いは奇跡が生んだ偶然だったのだろう。
もう会うことは無いに違いない。悲しいが事実なんだろう。
帰りはやけに長く感じる道を歩きながらも、馬鹿の一つ覚えみたいにあの少女に似た奴を探す。
もちろん本人が見つかることは無い。
いい加減早く帰ってふっきって、ホットケーキでも食べることにしよう。
まだ昼だがビールでもいいな。今日はルッツも家に居るから。
「・・・・・・? 家の前に誰か居るな・・・・・・」
俺の住む家の前でうろうろしてる奴がいた。
今の距離からでは遠すぎて性別すらわからない。
だがそれは家の中に入ることは無く、ずっと扉の前をうろうろしている。
もう少し近づけば、長い髪からそれが女であることがかろうじてわかった。
家のチャイムを押すことも無くただずっと家の扉の前を行ったり来たり。
その女を不審がってじっと見ていれば、突然女は倒れこむ。どうやら転んだらしい。
とりあえず誰であろうと心配するのが普通で、心配になった俺は走り出した。