犬も歩けば棒に当たる。…私は何に当たる?

□午後につき
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朝から雨が小降りで降っている。じめじめした梅雨の時期だから仕方ないとは思うけど。
それでも憂鬱な気分になるのはしょうがないと思う。

なんでってこんな憂鬱な天気の中、更に憂鬱になろうかと受験勉強なんてしなければいけないからだ。
しょうがないのはわかっているが・・・・・・流石に毎日勉強して、気分転換すらまともにできていない。

頼むから一日休ませて欲しい・・・・・・!!


「あー、やだやだやだ、勉強頑張るぞおぉぉぉ!」


しかしそんな事言ってられないのが受験生。

文句を言いながらも自分に気合を入れて先ほどまでとは違う教科のノートを開く。
時計をみてあと何時までは頑張ると目標を決めて、勉強に取り掛かる。


・・・・・・予定だった。


「春海! 頑張っとるか?」

「なんで来るかな・・・・・・」

「なんや、ちっとは気分転換も大事やで!」


勉強に取り組もうとした時丁度に、突然来た来訪者に私は頭を抑えるほか無かった。
なんでこんなときに。


私の部屋に来たこの男は誰って、私の先輩で、彼氏であるアントーニョだ。


なぁなぁなぁ、と楽しそうにトニーは私に近づいた。
一応彼自身は励ましに来てくれてるってのはわかるが・・・・・・

彼が来ると毎回勉強どころではなくなってしまうのだ。




例えば。


「なぁなぁなぁ、構ったってー!」

「今勉強ちゅ、髪引っ張らないで!」

「ええやん、親分とええことしよ」

「変なトコ触るな変態!」

「へぶら!」

「ふ、勝った!」

「親分そないか弱くないで!」

「ぎゃぁあああああ!!」


・・・・・・勉強中に髪の毛引っ張ったと思えば肩をいやらしく触ってきたり。ついでにその後押し倒された。

あと、



「春海、暇なんよぉ。」

「じゃあうちの犬の散歩行ってきて。」

「春海も!」

「行くわけないで・・・・・・ぎゃぁあああ!」

「ほらぁ、わんこも行きたい言うとるでぇ。」

「もう、やめっ」

「・・・・・・春海かわええなぁ。犬と戯れてほのぼのするわぁ」

「重たっ! っ、ひぃぃいいいい!!」



・・・・・・うちの犬(かなりの大型)を無理矢理けしかけてきたり。




「なぁ春海、」


今日こそ無視を徹底してやると意気込んで、名前を呼ばれても勉強机にかじりつく。
絶対に振り向かない。振り向いたら犬が居るに違いない。


「映画見るかー?」

「・・・・・・」


無視だ。無視無視。私は今ある意味でむしきんぐだ。
・・・・・・なにも面白くないな。


「俺な、動物モン探したんやけどあんまわからんくてな。フランに借りたん。」

「それは動物モノじゃないんじゃないの?」


思わずツッコんでしまってから無視できなかったと思うがもうそれはあきらめよう。

フランシスが普通の映画って持ってるんだろうか。
偏見かもしれないがあいつはエロいDVDしか持ってなさそうだ。


「せやねぇ、俺家で見ようとしたら違うの入ってん。」

「・・・・・・予想はできるでしょ」


なにが入ってるのかすごく気になるところだがここで振り返ったらもう駄目だ。
全てが駄目になる気がする。

そう考えながら問題を解いていると、つんつん、と背中がつつかれる。
なに、と声だけで返事をすれば、少し愉しそうなトニーの声が返ってきた。
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