犬も歩けば棒に当たる。…私は何に当たる?
□午後につき
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「ゲームしてもええ? 俺新しいの買うたん」
・・・・・・振り向くぐらいならいいだろうか。
言いながら私の部屋にあるゲーム機を勝手に取り出してやり始めるトニー。
ちらちらと気になって横目で見れば、なかなか面白そうなアクションゲーム。
しかも前から私が気になっていた奴だ。
「必殺、親分あたーっく!」
とあるキャラクターがトニーに操られて技を繰り出していき、連続で攻撃していく。
本来はかっこいい名前であろう強力な技が、トニーによって台無しな名前と技になる。
しかしそのゲームをやってるトニーの横顔は真剣で、普段からその顔ならもっとモテるだろうと一人惚気る。
思わず手を止めて見入ってしまえば、一勝負を終えたトニーと目が合ってしまった。
それに彼はにこりとイケメンスマイルを繰り出して、あらかじめつなげられていた2Pのコントローラーを指差した。
絶対こうなることを予想していたに違いない。
確信犯的なトニーはずるいと思う。
それにわかっててやってしまう私も馬鹿だ。
「ちぃとだけやから。ええやろ?」
「ちょっとだけなら・・・・・・やろうか」
しかしそうとわかっていても誘惑に負けてしまうのが私で。
もうこれは逆らうことが不可能とずっと前から知っているのであきらめて椅子から降りる。ちょっとだけ、と自身に何度も言い聞かせてトニーの隣に座った。
「喰らえ! 親分イリュージョン!」
「なんの! 効かないわ!」
「なんやってぇぇ!?」
完璧にこれは私の負けだ。そう気付くのはあと何時間後のことだろう。
それにすぐ気付かないほどに私たちはゲームにのめりこんでしまっていたのだ。
実際私はコントローラーを手に取り、やり始めてしまえば。