犬も歩けば棒に当たる。…私は何に当たる?
□サイ○人を目指す不審なヒーローと引きこもり成人女性
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ガチャリと重たいドアを開け、家の中に入る。
ただいま、と言っても返ってくる事はない。
もう一人暮らしを始めて5年になる。
それでもこうやって誰か居る事を願うようにただいまと言うのは。
・・・・・・ただの癖だ。
「あー疲れた」
はぁ、とため息を含め独り言を吐きだした。
そして冷蔵庫に今日買った食材達を入れようと玄関から台所に向かって歩き出す。
その途中のリビング。
誰かの声が聞こえた気がして台所に向かった足が止まる。
テレビを付けっぱなしにでもしたのかと思い、電気を付けた。
「かーめぇーはぁあーめぇえー……はぁああぁあ!」
「・・・・・・」
そこにはいつものリビングの姿ではなく、リアルでサイヤ人がいた。
髪が金髪のめがねで変な格好の。しかも土足。
なんだこいつ。
「Whaaaaaat!? 何回やっても出ないじゃないか! 」
そりゃ出ねぇよ。
人んちで何やってんだこの不審者。
警戒を丸出しで不審者を睨んだが、自分の世界に入りきった彼はあたしの存在に気付きそうもない。
・・・・・・もし仮にカメ○メ波が出たとしたら部屋の中が大惨事じゃないか。
本当になにしてるんだこいつ。
買い物袋を持ちながらゆっくりと近寄る。
さらさらとしたオレンジ寄りの金髪。染められているにしては綺麗だ。
軍服? のようなズボンにジャケット。まるでなんかのコスプレ。
顔はまぁ、整っていてメガネがよく似合っている。
頭にはぴょこんとアホ毛が存在を主張していた。
・・・・・・この人どっかで見たことあるな。
「OH! Hey,girl!」
「えっ」
見つめたまま考えていたせいか相手があたしに気付いたらしい。
にこやかにあたしに近付いて来た。
それはもう自分が不審者では無いと信じきっているんじゃないかと思うぐらいに爽やかに。
わかった!
きっとこの人・・・・・・
「ちょっとききたいんだけど、ここら辺に亀仙人の家はあるかい?」
この顔にぴんときたら! に出てるような人だ! だからこんなに見覚えがあるのか!
不審者はあたしに近付いて来ている。
もう少しで相手の手が届くだろう。そんな距離。
こ、殺される!
「そもそもここはどこら辺だい? もしかしてベ○ータはもう来「うわぁああっ!」
あたしはとっさに手に持っていた買い物袋を振り回す。あたしはまだ死にたくないんだ。
次の瞬間ぐしゃり、と卵が割れたらしい音と不審者のぐぇっ、と言う声が部屋に大きく響いた。