犬も歩けば棒に当たる。…私は何に当たる?

□ラフ・メーカー
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体中の水分を使い果たす勢いで涙が流れる。
大洪水の部屋にノックの音が飛び込んだ


「……あのやろう


まだ居やがったのか
掠れてがらがらになった声で小さく悪態をついた。
あれから時間がたったのか、または全然たってないのかまったくわからないけど、私はドアに近づいて出来る限りの大きな声で言った。
どん、と訴えるようにドアを叩く。


消えてくれって言ったろう

「……そんな言葉を言われたのは、


未だに続いているアントンの標準語にイライラは募るが、その声の低さに気付く。


生まれてこの方初めてだ。
 非常に悲しくなってきた



言われて初めて本気でアントンに怒った事を思い出す。
それでももうそれ以上気にする事も出来ずに、ずるずると力なく玄関でへたり込んだ。


どうしよう、泣きそうだ


そうアントンの声で聞こえたその次に。本当に泣き声が聞こえてきて。
誘われたのか再び私の目から溢れる大粒の雨。


ラフ・メーカー!?
冗談じゃない。アンタが泣いてちゃ仕様がない。


アントンだって知ってる筈だ。
私がどれだけ悲しいか。

ずっと私の隣にいた腐れ縁。わからないわけが無い。


泣きたいのは、俺のほうさ
こんなモン呼んだ覚えはない
怒り、悲しみ、悔しさ、うっとおしさに寂しさが入り混じった涙が、こんどは玄関に水溜まりを作り始める。

ぐす、ぐすっ、と寂しく響く二人分の泣き声遠く……
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