犬も歩けば棒に当たる。…私は何に当たる?

□うるさい、ばか
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手から流れる血。
赤く染まった布。
その様子は滑稽な私の様で。

笑えたと一緒になんだか泣けた。

ぎゅ、とその白い布を握ればまた新しく出来る赤いシミ。
握った手が少し痛くてまた涙が出た。



悔しい。


苦しい。


思い通りにならない自分に苛立ちが収まらない。


さっき手に刺さった針がカランと机に零れ落ちる。
同時に涙も零れて針に向かって落ちた。


「な、泣いてんのか?」

「だ、って」


だって、私は心配そうな顔をしてる佑助に言って払った。

お前はこんな事で悩んだ事なんかないからわからないだろう。
器用なお前に私の気持ちなんかわかってたまるか。ばか。


「ホントお前って不器用なのな」

「うるさい、ばか」


はぁ、とため息をこぼしたのは佑助。
くそ、となみだをこぼしたのは私。


佑助はそんな私に苦笑いしながら私が持ってた布を簡単に奪って行った。

私の血と涙で所々の色が変わった布を見て、佑助がうわ、と言葉を零した。


「なんでこんな色変わるんだよ」

「しょうがないよ、不器用なんだから」

「不器用でなんでも片付けるんじゃねえよ」


ばか、と私の代わりに佑助が言う。
うるさいよ、ばか。


「まず手、貸せ」


やだ。と言うのに構わず奪われた手。
無理やり離そうと思ってもその通りに手が動かない。
私の手に何枚も絆創膏を貼りながら佑助が明らかに呆れた声で言った。


「被服実習だけでこんなになるってどういう事だよ」
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