犬も歩けば棒に当たる。…私は何に当たる?
□君=恋愛ゲーム≠ハッピーエンド
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「なぁ散歩だけでもいいんだ」
「やーだ。外に出たら溶けちゃう」
ほら。また目を合わせようとしない。
それに寂しいを覚えながらなおも食い下がり、どうにか了承を貰おうと顔を覗き見る。
しかし見れば見るほど春海はゲーム機に顔を近付けて俺から顔を反らしていく。
「俺が嫌いなのか?」
「お前等の愛で見えない」
「訳わかんねぇよ・・・・・・」
深くため息を付いてまず会話が成り立っていない事に頭を悩ませた。
どうすればいいのか光の欠片すら見当たらない。
この迷路の出口はドコデスカ・・・・・・むしろ出口ってありますか?
もはや春海が何を言っているのかさえわからない状況だ。
「つーよーがってばっかでなんか、そーんしてる気がする」
だってそうじゃん?
唐突に鼻歌まじりで歌う春海が可愛いと思う俺は病気だくそっ!
本当に損してんのは多分俺だ!
はぁあ、とまたため息を付いて俺は立ち上がる。
何に対して頑張ったのかはわからないが息抜きに紅茶でも飲もうと、食器棚からティーポットを取り出した。
春海が唯一俺にくれた物でありアンティークなデザインが気に入っているそのポット。
春海がそれをくれたのは去年のクリスマスで・・・・・・初めて春海に貰ったプレゼントで、俺にとっては何よりも貴重なティーポットである。
しかしこれをつかって紅茶を入れる時いつも俺の事をセバスチャンと呼ぶのは何故だろう。
「春海、ダージリン煎れたぞ」
「よくやったセバスチャン」
「またかよ・・・・・・」
春海は二つ折りだった携帯ゲーム機をぱたんと閉じて 紅茶を見て にこりと笑った。
その黒い目が俺に向けられる事は、無い。
目元まで伸びた前髪。
セミロングの後ろ髪はポニーテールになっている。
少し赤くなっている頬。
細い腕と腰。
日本人としては色白い肌。・・・・・・多分外に出ないからだろう。
見るほど惹かれる彼女は本当に俺を愛しているのか、心配でたまらない。
もしかしたらまったく好きなんかじゃないのかもしれない。
そう思うと悲しくて心臓が潰れそうになる。
だから、意を決して、聞いた。
「春海」
「なんだいセバス」
「俺とゲーム、どっちが大事だ?」