犬も歩けば棒に当たる。…私は何に当たる?
□好きすぎてすき過ぎて
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好きだよ。
愛してる。
どこの誰よりも君が好きだよ。
今まででこんなに人を好きになった事はない。
君は夜空に浮かぶ月の様だ。
いつまで見ていても飽きない。
むしろ惹かれて止まない。
「ふーん」
ねぇ春海、俺と良いことしない?
一晩を共にしてより仲を深めようよ。
俺君の事を思うだけで切なくなるんだよ。
それだけ君が過ぎなんだ。
だから少しぐらいこっち向いてよ。
「あっそ」
「なんだよもう! 春海ちゃんの意地悪! お兄さん拗ねちゃうよ!?」
「どうぞどうぞ」
俺はじとりと春海ちゃんに穴を開けんばかりに見続けた。
しかし彼女はなんのその、と言わんばかりに(実際なんのその、とか言ったりしない事は俺がよく知ってる)本にその目を向けている。
なんて意地が悪いんだろう。だけどそこを含めて俺は春海が好きなんだ。
だけど君はたとえ俺が押し倒した時だって冷静に「なに」と言えるんだろうね(もう一度実践してるからたとえではないけど)。
どうすれば君が振り向いてくれるかを考えて、実行しては失敗する。
随分前の顔を赤らめて好きだと言ってくれた君はどこに言ったんだろうね?
・・・・・・いや、夢とか幻覚なんかじゃないよ?
じゃなければ彼女はきっと俺が家に来たって鍵も開けずにいるだろう。
実際このまえイギリスのやろーが来たときは鍵も開けずインターフォンだけで追い返してた。
あの時の奴の顔を思い出すだけで優越感に浸る事ができるね。
しかしたった家の中に入れるか入れないかの違いではなにも変わらないのだ。
現に俺らはただ一緒の空間にいるだけで、手をつなぐなどのボディタッチはおろか会話だって俺からじゃないと始まらない。
これじゃイギリスと一緒なのだ。
これならイギリスよりも少ししぶとく、窓から彼女の姿を見れば済んでしまうような事なのだから。
だから俺は春海のあの黒い目をどうにか自分の方へ向けて、それでいて彼女の思いをその口から聞きたい。
だからこそ俺は、今までにない、今まで以上の行動をおこす。
彼女はそれに驚くだろうか。
もしかしたら彼女の事だからほんの少し、他の誰にもわからないぐらい大きな目を見開くぐらいかもしれない。
そして少し不機嫌そうな声で「・・・・・・なに」と俺に聞いてくるのだろう。
なんて可愛らしい春海。
想像しただけで胸が踊り、なんでもっと早くこの考えに行き着かなかったのだろうとも悔やんだ。