犬も歩けば棒に当たる。…私は何に当たる?

□ゆびきりと約束は
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広い野原。
一面の緑が私を囲う。

やはり世界は広い。1人だと尚更広い。
そんな矢先、私は1人じゃなくなった。


もしも君がこの先辛くなる事があっても、ミーが君を守るッス。

どこかの小さな男の子が、隣にいる小さな女の子にそう言っている。
ままごとか何かだろうか。
初々しく指切りなんかして。

彼は誰だろうか。彼女は誰だろうか。
ままごとの続きし始めた彼らは、とても幸せそうだ。


無邪気に、ずっと一緒にいられる。そんな風に考えていた時代だった。
そうやって信じて疑わない、疑えないそれは。


私たちだったんだ。

ああ、一体いつの事だろう。
何十年か前? それとも何世紀も前の話?

約束したことしか思い出せない私は相当年をとったんだ。
もちろん、同じように君も年をとったに違いない。
国として。人として。


そしてそれを覚えてるかどうかは、また別にして。




春海、と自分を呼ぶ声で目が覚めた。
目が開いたついでに見回せばここは私の部屋である。

野原ではない。


「なにごとだ・・・・・・」


乾いた口の中でなんとか呟くと。
寝起きで口の中がパサパサしていてうまく言葉にならなかった。

きっと口の中では何万の細胞が死んでいるんだろう。
そんな感じなのこの前テレビでやってた。


朝日が眩しくてとても目なんか開けられない。
どうせさっきのも夢の中の話。もしくは夢の境目の声だったんだろう。


「ねむちゃ・・・・・・」


続きでもみよう。
今度はもっと楽しい夢になるかもしれない。

ばさりと布団をかぶり直し、二度寝しようと試みる。
まぶたを閉じればゆっくりと眠気が襲ってくる。
どこまでも、どこまでも・・・・・・・・・・・・それが心地良い。


「ミーは何度春海を呼べばいいッスか」


一生呼んでろ。
喋れてるか危ういと自分でも思いながら意識はどんどん落ちていく。


二度寝ってこれだから止められない。


「春海いい加減にしろ的な」


むぎゃ、と言えたかどうだかもわからないが。
とにかくそんな声が出た。

鼻に衝撃。呼吸が出来なくて無意識に口が開く。
すーはーと激しく息を吸っては吐いて。

首を左右に振って自由になった鼻で息を吸い始めた時やっと異常に気が付いた。

現実に誰か居る。
それは決して夢なんかじゃなくて。


「誰?」


自分では勢いよく動いたつもりだが、朝だからか全然うまくいかない。
頭が指令をうまく出さない。


「俺です的な」


ばさり、と体に引っかかってL字になっていた布団が力無く二つ折りになった。
それはまるで私の気力にも見えたが今はそれもどうでも良かった。


何しに来たし。かすれ声で聞いても、目の前にいるチャラ男はにこりと営業スマイルをかますだけだった。
その鼻に彼の大好きな花火を突っ込んでやったら・・・・・・もれなく自分の身が危険に及びそうだ。やってみたいけど。

そんなびびりな私の気持ちなんか気にせず、彼はにやにやしながら口を開いた。
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