犬も歩けば棒に当たる。…私は何に当たる？
□いたちごっこ
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窓からの明るい光を顔面に浴びて。
俺はまた目を覚ます。
ベッドの脇に置いとったデジタル時計が、起きるつもりだった時間の15分前を示していた。
やった、早く起きれたわ。
もうちょい寝よかな。
そう思いながら寝返りを打つと、ふと思い出す。
……止めよ、やっぱ起きないと駄目や。
シーツを体からひっぺがして、俺は勢いをつけて起き上がる。窓際のカーテンをそのままの体勢で開けた。
今日もおてんとさんは眩しなぁ。頑張りすぎや。
「俺も頑張らな」
昨日の残りのパエリアをレンジで暖めてる間に、洗面所で顔を洗った。
うわ、寝癖ついとるやん。直しとこ。
その所為でうっかりパエリアを暖めすぎてしもて、レンジから出して冷ます。
やっぱりあまり整わへんけど、髪を荒いブラシでとかす。痛っ、また引っかかったわ。
それから少し冷めすぎた気もするパエリアを何度も噛んでゆっくり食べる。
やっぱ美味しいわ。
ネクタイをきゅっと閉めたら、部屋の鍵を持って玄関へ向かう。
もういっその事早めに家出発して、あいつと鉢合わせせんように行けばええんやて。
そう言うわけでちゃっちゃと外へ出た。
時間は早いが世界会議場への飛行機はあるはずだろう。
鍵をかけようとしたら、ご出勤のお父さんが隣から出てきて俺と目があった。
「おはようさん、天気がええなぁ」
朝のあいさつを交わして俺は空港へ向かう。逆に遅刻とかできても嬉しいんやけど。
しかし運悪くタクシーはすぐさま捕まって。運悪く空港ではすぐに会場最寄りの空港までの便が見つかって。
そして更に運悪くその便にはキャンセルが出来て。しかもそれが俺が係員に確認しよと思って受付に並んだすぐ前の人がキャンセルしおったから笑えない。
笑えへん。なんもおもんない。
ものの３時間で会場につくとか、冗談きっついわ。
あーあ、行く気せぇへん。何が行く気せぇへんて。
「よぉ」
こいつがいるからや。
このくそったれ眉毛。
会場で一番に会うてしまうなんて、今日は厄日としか思えない。
最近とある事をきっかけにやたら俺と話す機会が増えたカークランドは、俺を睨むでもなく挨拶して近づいてくる。
いっそ睨んでくる方が良かったと何度思っただろう。
なんや無性に殴り倒してやりたいわ。
以前よりもずっと。
今日もカークランドは俺の苛立ちも知らずに友好的に近付いてきた。くそ、これから会議やなかったら鼻っ柱折ったりたい。