犬も歩けば棒に当たる。…私は何に当たる?

□いたちごっこ
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「最近調子はどうだ?」

「まぁまぁや」


そのまま会場の中に突き進んで行く俺と、その隣をさも仲が良さそうに歩くカークランド。
なんやこれ。なんで仲良さそに歩いとんの?

厄日か。


このまま会議室に入っても、会議までまだ数時間と言う単位で残ってる。
中に誰かすでに居てくれないかと、期待を持ってドアを開けた。

予想をしていたが、室内ははすっからかん。


最悪や。やっぱ二度寝しておけば良かった。
二度寝と言わずずっと寝てれば良かったんや。


「春海は元気か?」


何個もあるイスからいつもの席を選んで座って、鞄から昨日作ったチュロスをかじる。
完璧に一人の世界を作ろうとしていた筈が、そんなの関係なしに突っ込んで来よった。

やっぱ、こいつの弟はこいつに似ていたらしいわ。


その空気が読めへんカークランドが口にしたのが、俺の妹の名前。
俺にはあまり似ずに素直で可愛いらしい女の子だったはずや。

しかしどこを間違えたのか、俺の大っ嫌いなこんな男と付き合う事になってしまった。
そんな可愛い俺の妹。
ロマと一緒にいるのを見るとその日一日なにがあっても幸せだと自信を持って言えたんや。それなのに。


「元気いっぱいやで」

「そうか。昨日ため息吐いてたから心配で」


会うとるやないかい自分。
脳天気な眉毛に聞こえへんように舌打ちした。


なんでほんまカークランド俺んとこいるん?
なんでこいつ春海の彼氏なん?

おもんないわ。なんもおもんない。
全部こいつが悪いんや。……多分な。


「昨日会うたんとちゃうの?」

「え?」

「自分や、自分」


チュロス頬張りながら、カークランドを指差した。
別に俺から話しかけんでも良かったはずやけど、なんか違和感あったから。

昨日、春海ロマと遊んでへんかったかなと。
一日中、俺んちでゲームしとったんだと。


なんでこいつ春海と会えたん?


指差されたカークランドは照れたように笑って、俺を見た。
なんや気色悪いわ。

そして、彼氏は異常さを俺に見せ付ける。


「昨日は春海の服に盗聴器を付けてたんだ」

「気色悪いわお前」


最低やな彼氏。別れろや。

予想していた数倍に変態だった妹の彼氏を睨む。
ここは親分として一発ガツンと言うたるべきか。

……いつでも殴りたいのは変わらへんけど。
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