犬も歩けば棒に当たる。…私は何に当たる?

□もしもご主人様が違ったら
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  もしもご主人様が違ったら



「次はこれだぜ!!!」


さっさと着替えろと言わんばかりの輝いた赤い瞳
唇の両先端を斜め上につり上げ楽しげに笑うご主人様


「はっはい…」



これで何着目だろうか
メイド服を着せられるのは
正直、疲れてしまった


何故、こうなったかと言うと
ご主人様のふと発した一言が原因だった

もしもご主人様が違った




「春海って…メイド服が妙に似合うよな」


「ぅえ!?そっそうでしょうか?」


飢え死にかけた私を救ってくれたご主人様こと
ギルベルト・バイルシュミット様
性格は荒い方ですが不器用なだけでとても優しい方です
ちょっと、強引なとこありますけど……コホン



「あぁ、そうなんだけどよぉ
そのノーマルなメイド服…じゃあ足りねぇんだよな」

「と、言いますと…?」


私は恐る恐る問いかける
考え込むようにしていたご主人様は、
私をじっと見つめニヤリと不敵に笑った


「春海、今から色々着てもらうぜ?」

「ですよねー……」




****


と、言った感じだ
確か…本田様?に連絡をして
色々なメイド服をレンタルするとかなんとか
ちなみに恐ろしいことに
レンタル料はメイド服を着た私を写真で撮るとか…
(お電話をしてるときにこっそり聞いちゃいました)

それで今、この現状
一人、目の前にある種類豊富のメイド服とにらめっこ
ご主人様は私が着替えるので
部屋から出ていき扉の前で待機している
どのメイド服を着るかは
私の好きにして良いらしく
とりあえず一番近くにあった
少し露出のあるメイド服を手に取る
これで何着目だろうか…7着目とか……


「はぁ…ご主人様の期待に応えるためにも!!!」



自分の頬を両手でパチン、と叩き気持ちを入れる
後ろについているファスナーを下ろすために手を回す


「うっ…ふっぅ…んっ」



自分が着ているメイド服は
少々古くファスナーが固いのだ
そのためファスナーがなかなか落ちてくれず、
一人必死にファスナー下ろしに取り組んでいたのだが


「おっ…おい、春海?どうした?」



扉ごしにご主人様の困惑した声が聞こえてくる
私がご主人様を困らせている、
と考えるとすごく暗い気持ちになる


「えと…ファスナーが下ろせなくて…」

「あ、……手伝うか?」

「あ……、お願いしても良いですか?」

「あぁ…」


ガチャリ、と音を立ててゆっくりと開く扉
俯いたようにご主人様は部屋に入ってきた
そして、少し頬が赤い気がする
ご主人様、ご無理わなさっているのでしょうか……
心配になりつつも
ご主人様は私の背中の後ろに立った


「これ、だよな……?」

「それです、お願いします」

「あぁ、わかった」


メイド服のファスナーにご主人様が手をかける
首筋にご主人様の冷たくなった指が当たる
とてもひんやりしていた
ずっと廊下にいて冷たくなってしまったのだろうか
そんなことを考えている内に
じーっとファスナーが落ちる音がした
多分、腰上ぐらいまで落としてくれたと思う


「ありがとうございます」

「いや、気にすんな!!俺は優しいからな!!!」


「そうですね、本当にお優しい方です」


「だろっ!!!ってえ……?」

「私を拾ってくださって、更には住み込みで働かせてくださってるんですから!!!」


「………」


「本当、感謝しています!!!」



にこ、と効果音がつくぐらいに
感謝の気持ちを込めて笑ってみせる
先程までにやにや、と笑っていたのに
今は耳まで真っ赤にしてそっぽを向いてしまっている
確か褒められてないんだっけな


「そりゃ、良かったな… つかさっさと次のやつに着替えろ!!!」

「はっはい!!!」




その後、5着は着せられました。





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