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□雨のカーテン
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いつもの帰り道

騒がしい三人娘(特にハルヒ)の少し後ろを
古泉と並んで歩く。

これといって会話はないが
別に嫌ではない。

当たり前のように隣に古泉がいて

目の届く所にハルヒ達がいる。

本当に ただそれだけで幸せを感じてしまう俺は、どうやら余程こいつらといるのが好きなようだ。

顔には出さんがな。

「なにやら 幸せそうな顔をしてますね。」

胡散臭い笑顔を貼り付けた古泉が
ハルヒ達には聞こえないくらいの声でそう言った。

「そんな顔はしてない」

古泉に気付かれた事がちょっと…いや
かなり恥ずかしく思った俺は、否定の言葉を吐いたが

「目を見れば分かりますよ。」

古泉には通用しなかったらしい。

「なんだよ。悪いかよ」

恥ずかしさMAXな俺は
まともに古泉の顔を見る事ができず
ハルヒ達を見たまま呟いた。

「いえ。僕もあなたと同じ思いでいましたから。
今のこの状態が幸せだと」

出来れば ずっとこうでありたいものです。

古泉は あの胡散臭い笑顔ではなく
穏やかな笑顔を見せてそう続けた。

「ああ そうだな」

こんな 何もない平凡な日常がずっと続いてもいいじゃないか。
ハルヒもあの変な力だっていつか無くなるだろうし
そうなったら古泉も長門も朝比奈さんも
きっと
それぞれの居るべき場所へと帰って行くんだろうな。

だったら せめてそれまでの間でいい

この面子で居たいと思う。

「キョーン、古泉くん見て!凄いわ!」

前を歩いていたハルヒがこちらを向いて自分達の前を指差してなにやら叫んでいる。

「なんだ?」

「なんでしょうね?」

そう言って古泉と顔を見合わせていると

「早く来なさい!」

ハルヒが俺達の手を取って自分達の居た場所へと引きずって行った。

「こんなもの そうそう見れないわよね」

自慢気にそう言ってまたハルヒが指を差した先には

「なんだあれは…」

こっちは綺麗に晴れているのに
少し先では雨が降っている。

しかもその雨は徐々にこちらに向かって来ている。

「凄いと思わない?」

目を爛々と輝かせて言うハルヒの横で
朝比奈さんは

「すごいですぅ〜」

と 感心しており

長門はその光景を黙ってじっと見ていた。

「雨のカーテンみたいですね」

俺の隣で古泉が妙な歌の題名にもなりそうもない事を言った。

あり得ないこの光景を見て
ああ やっぱり平凡な日常はまだまだ先だと感じた。

それでも はしゃぐハルヒに
それに合わせて笑う朝比奈さん
その二人をじっと見つめる長門
俺の隣で三人を見て微笑む古泉
と俺

その立ち位置を幸せだと感じるのは…悪くないよな?


その後―

全員 雨に濡れたのは言うまでもないだろう…。

end

★実際 自分体験しました雨のカーテン…
誰も信じてくれなかったけどね…

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