短編

□雨の憂鬱
1ページ/2ページ


最悪だ。
傘は盗まれるし、雨の勢いはどんどん強くなってくは、挙げ句の果てに、
ピカッ
ゴロゴロゴロ
雷まで鳴るたぁ、今日は厄日か?
「どうすっかな〜」
止む気配は無い。
つまり、
「濡れて帰るしかない、か」
それにしても、梅雨だからってこの勢いはなくね?
イジメですか?コノヤロー
あ〜帰りたくねー
いや、帰りたいんだけどね
ハァァァ
でっかい溜め息をつき、俺は覚悟を決め、足を踏み出した、
その時
バサッ
スタスタスタ
…って
「待てコラァ!」
「なに?」
OK、状況を説明しよう。
バサッとは、俺の横でアイツが傘を開く音。
スタスタスタとは、アイツが俺を無視して歩いて行った音。
そして、アイツとは俺の隣近所に住んでいる、“上木紅葉”
「普通、傘がなくて立ち往生してる幼馴染みがいたら入れるのが道理じゃね?」
「幼馴染みじゃない、腐れ縁。」
「どっちでもいいから、俺を傘に入れろ。」
「イヤ。」
「………何故?」
「アンタと付き合ってると勘違いされたら迷惑。」
「俺だって迷惑だわ!!」
「なら、入らなくていいでしょ?」
「雨に濡れる方がヤなんだよ。
いいから、入れろって」
アイツの所まで小走りで行き、無理矢理傘に入る。
少ししか雨に触れてないのに、結構濡れたな。
ガスッ
「ウエッ!?」
バシャッ
はい、アイツに蹴り出されました。
「何すんだよ、紅葉!」
「勝手に入って来るからよ。」
「んだよ、それ!」
あ〜もう、びしょ濡れになっちまった。
ここまで濡れたなら、今さら傘なんかいらねぇか。
「全く。
お前どんだけ、俺のこと嫌いなんだよ」
「…………」
ん?何で黙りこんでんだ?
「別に、嫌いなわけじゃ」
「あ?何て言った?
雨で聞こえねぇんだよ」
「何でもない!」
何で怒ってんだ?
俺が疑問符を飛ばしていると、紅葉が近づいてきて、
ボスッ
と、傘を俺の上に落とした。
「……何してんの?お前」
「傘に入りたいんでしょ?」
「だからってお前が濡れちゃ意味ないだろ?」
そう、俺に傘を落とし紅葉がずぶ濡れになりながら、立っている。
全く、コイツは。
「ほい」
「なによ?」
「なにじゃねぇよ。
お前の傘だろ?」
スッと傘をアイツの上に掲げたのに、受け取ろうとしない。
「今さら、傘なんて意味ないわよ。」
「そんなん、俺だって同じだろ。」
「………」
またも黙り込む紅葉。
やっぱり今日は厄日だな。
グイっと紅葉の腕を掴み、歩きだす。
傘は、俗に言う相合い傘の位置にキープしてる。
「いきなり、何すんのよ!?」
「だってお前傘受け取らないし、俺だけ傘使うってのは、アレだ。罪悪感みたいなのが。」
「………アンタに罪悪感なんてあったのね。」
「どういう意味だ、こら。」
んとに、口の達者なヤツだな。
ん?
スッと紅葉の顔を覗き込む。
「な、なによ?」
「お前なんか顔紅くねーか?ブッ」
「うるさい!紅くない!!」
何故殴られた?
「この天然タラシが。」
「ん?何だ?」
「何でもない!!
てか、いつまで手握ってんのよ!?」
「あ〜」
すっかり忘れてた。
でも、まぁ
「いいじゃん、このままで。」
「はぁ!?」
「昔を思い出して懐かしいし、それに何かこうしてたいんだよ。」
ん?毒舌が飛んでこないだと。
チラリと紅葉の顔を伺う。
さっきよりも、更に顔が真っ赤になっていた。
多分それを言ったら、また殴られるだろうから黙っておこう。
それに、今顔を見られたくない。
紅葉につられて俺の顔も真っ赤になっているだろうから。



NEWT後書き
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ