bleach1

□彩る
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また年が明けた。

早く目覚めた朝
窓の外の天気はすこぶるいい。

枕元の携帯を覗くと、メールが一件。
相手はもう察しがつく。


「正月からうるせえ文面」

ごてごてした絵文字が並ぶメールを読み終え、ゆっくりと体を起こした。
こういうとき何を着てけば良いのだろう
そう思いつつも、やっぱりめんどくさくなってしまって、適当に手に取ったものに袖を通す。
遠出するわけではないだろうし、財布と、一応定期と。


ほとんど手ぶらのまま下に降りて、まだ誰もいない食卓に入る。
遊子も寝ているので、飯の支度はもちろんまだである。

時間もそんなにないので、また適当に胃に入れて、あくびをしなが外へ出た。
朝焼けが気持ちいい。



時間が早いためか、外は静かだった。
初日の出を見てきた人々は大半が家に帰っているし、
きっと今行き交う少数の人は、俺たちと同じ目的なのだろう。



「あっ、一護!きたきた」

そして眼前に、今朝のメールの差出人

「あっけおめーーーいっちごーー!!!」

「抱きつくなきもちわりい」

静かだった辺りの雰囲気は台無しだ。


「黒崎君、あけましておめでとう!」

明るく声をかけた井上は、それも正月らしく振袖姿だった。
艶のある赤色は、とても井上らしいようである。

「おー井上、おめでとう。似合ってんなそれ」

「えへへーそうかなあ」

「おい一護口説いてんじゃねえぞ!あでででででで」

「あれ、たつきは?」

「いるよ?私の後ろに」

言われて目をやると、確かに黒髪が井上の肩から出ている。


「おいたつき」

「何」

「新年早々何はねえだろ、なんで隠れてんだよ」

「うるさい」

「もおーたつきちゃん」

「いちご〜あっ、もう皆来てる」

「おせーぞ水色お〜」

「ごめんごめん、じゃあ行こうよ、本格的に混む前にさ」



そのまま歩き出して気づいたたつきの姿。
奴もまた、井上と同じ振袖姿だった。
たしかにさっき隠れていたときも、白いふわふわしたものが見えてはいたが。

あまりの衝撃に口が閉じなくなった、というのは半分冗談だとしても、後ろ姿だけではよく理解ができず、井上にしがみつく腕を引きはがして隣に寄せた。


「よおお前、何恥ずかしがってんだよ」

「恥ずかしがってないわよ、自意識過剰」

といいつつも顔が赤くなるたつきは、どうやら本気のようだ。

「正月早々つんけんすんな!」

「正月早々大声で喚かないでよ!」


お互いに罵声を浴びせながら、すぐに前の集団の視線を感じて、黙った。


落ち着いて見てみた姿は、やはり美しかった。
最近よく見かける下品な柄ではない、息をのむような美しさの着物。
生地も相当立派なようで、なんともいえない高級感が漂いながらも、独特の美しさを失っていない。

「たっかそーだなそれ」

「え?ああ、これお母さんのなんだよね。あんたにあげるって」

「へえ」

たつきの母親も、たつきによく似て綺麗な人だ。
きっとこの振袖も同じようによく似合った事だろう。


「だから屋台とか出てても迂闊に食べられないな」

「なら俺が散財することもねえな」

「なによそれ」

自分に向けられた顔の美しさにも、はっと目を奪われた。
目が合うと、向こうも顔を少し赤らめて、視線を前に戻した。
なんとなく、緊張してるのがわかる、固まった表情。
それは俺も同じだった。


その赤がかった頬は、薄い化粧がされたたつきの顔を彩る。
もうどうしようもなくなってしまって、結局自分も視線をそらした。
つややかに光るピンク色の唇がやけにじれったかった。



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