silversoul

□匂い
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懐かしい匂いがした

近くに来てるのか


ああ、

何故ここまで空が青い



「土方さん」

背後から

今丁度捜索していた極悪人。


「そっ、総悟ォ!!てめっ、今まで何してやがった!!」

「嫌だなぁ、言われた通り巡回に行っ」

「じゃあ何で堂々と口に海苔つけてんだてめえは!!」

「・・・・・・あれ、ちゃんと拭いたのに」

「お前何度も言うが仕事なめてるだろ」


極悪人という名はコイツには合わない。


極悪人に悪い気さえする。


「まあまあ、それより」

奴はおもむろに懐から小さな紙の包みを出した。

「なんだ、それ」

「嫌味のつもりで持ってきやした。おばちゃんのサービスですってよー」


少し温かい、包みの隙間から、
香ばしくて懐かしい、


謎だった今日の憂鬱の原因
だと思った。

「・・・・・・・・・お前、」
「じゃ、また外出てまさぁ」



待て、俺にお前の事務を任せるな、遊ぶな、仕事しろ、と
言いたい事は尽きない程あったが、

自然と言葉は出なかった。



『十四郎さん』


『これ、そーちゃんの大好物なんですよ』

『十四郎さんも、はい』



『あっ、姉上、なんで僕じゃなくて土方に・・・っ』

『ふふ、大丈夫よ、ちゃーんとそーちゃんの分もあるわ』


『喉につまらせないように気をつけてくださいね』



涙は出ない

辛くもない


でも今日は
この空の圧力には勝てそうにない。



「今日は煙草やめるか」

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