「じゃあごめんね、出来ればいい子にしててね」

「ふん、せいぜい頑張るヨロシ」

今回大人な依頼だから、と
銀髪は私に告げ、新八と共に家をでていった。

「…暇アルナ、定春」

大きな瞳と見つめ合って、それから私は立ち上がる。

「散歩でも行くアルか、おいで、定春」

「…フシュー」

「…行きたくないアルか」


定春はそっぽを向いて、ぐうぐうと眠りだした。

「…ちぇ。じゃあ一人で行ってくるヨ」


今日は日差しが眩しい。
いつもの傘をさしながら、見慣れた町をあてもなく歩く。

「あっついアルな…」

何か食べたいと思っても、手持ちのお金はもちろん無く、酢昆布が残り二本だけ。
母に連れられた小さな子供は、アイスが食べたい食べたい、とねだっている。
私は、あの子供と、まだ同じ

「もう酢昆布きれたネ」

「何してんでいこんなとこで」

「おっ、サド」

「今から休憩しようと思ったのによお、邪魔だ退けクソチャイナ」

「あ、何アルかそれ!冷たそうアル!」

「ばっかおめぇ、これは酒だぜぃ、子供が飲むもんじゃねぇ」

「…またアル」

「え?」

「こんな真っ昼間から酒アルか」

「うっせーなあ、こんな暑さやってらんねーですぜ」

「…サドは大人アルか」

「お前よりはな」

「…私帰るヨ」

「え」

「やっぱり私はまだ子供ネ。仕方ないことアル」

「何言ってんでいてめぇ」

「じゃあナ」

私はベンチから立ち上がってその場を去る。



「…チャイナァ、」

呼ばれて振り返ると、頭にこつん、と何かがぶつかった。

「った、何アルか!」

「早く帰れ〜」

「…何ヨクソサドが…」

そして地面に、赤い小さな箱。

「…酢昆布」

もう一度顔を見ようとしたけれど、そっぽを向かれていて、目も合わなかった。

「ふふ、定春みたいネ。」


ああ暑い

こんな暑い日は
あの窮屈な家でぼろっちい扇風機の風を浴びて
少しも改善されない私の生活を、顧みるのもいいかもしれない。



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