言の葉
□日常=非日常
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青く澄んだ空、白く浮かぶ雲。
陽は燦々と降り注ぎ、そよそよとあたたかい風が吹く―。
そんな麗かな日に悲鳴が響くのが日常と化したのはここ、変人≪スプーキー≫と呼び声高い仙人・雲中子が住まう終南山。
そして今日も――
「雲中子ぃーー!!」
「こんの馬鹿師匠っ!!」
バターンッと二つの扉が勢い良く開き、部屋いっぱいに怒鳴り声が響いた。
「…っ!なんだい、騒々しい……。」
一人お茶をすすっていた変人―雲中子は突然の大音量に痛む耳を押さえ、非常識だと言わんばかりの表情(かお)で声の方へ振り返る。
玄関へ続く扉を開けたのは、白い顔を真っ赤にして肩で息をする男。
居間から廊下へ続く扉を開けたのは、これまた赤い顔をした弟子で、握った拳をわなわなと震わせていた。
「一体こりゃどーゆーことだっ!」
叫ぶなり詰め寄った弟子、雷震子。雲中子の襟首を掴みあげる。
「……。相変わらず、乱暴な子だねぇ。」
「っ相変わらずはテメェだろが馬鹿師匠!」
雷震子は続けて怒鳴る。
「どーして男の俺様にっ、そのっ…、こっこんなもんが、あるんだよっ…!」
が、途中から勢いをなくし、赤い顔を更に赤くしてうつむいてしまった。