言の葉

□「おかえり」
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「おい」
 後ろから聞こえた声に、満面の笑みを作った男は、振り返ってガックリと肩を落とした。

「君にしては大人しいと思ったんだ…」
「…ふん」
 太乙は改めてナタクを見た。道理で、ただいまがわりの攻撃がないわけだ。大方雷震子くんとでも手合わせ(と言うかケンカ)をしてきたのだろう。これはまた派手に…。あっちは今頃雲中子に拾われている頃かなぁ、等と頭の隅で考えながら、激しい戦闘をしてきたといわんばかりのナタクの様に、太乙は思わず苦笑する。それを見たナタクはむっとして、笑うなとでも言うように太乙を睨んだ。
 その反応によけいに笑んでしまいそうになったが、これ以上ナタクの機嫌を損ねるのは得策ではなく、太乙は緩む頬を励ますと少し困った顔を作って口を開く。
 
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