My novel -ver.dream- short.

□花見
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桜も散り始めた春夜…私は、土方さんと共に夜桜を見ていた。 「悪いな、花見、出来なくなっちまって‥。」 「良いんです。今、こうして二人で桜も見ることが出来ましたから。」 --本来ならば、昨日、新撰組全員で行くはずだったお花見。けれど、日頃の疲れからか、土方さんが体調を崩してしまった。---結果、二人きりで花見が出来たことは良かったのだが… ちらりと土方さんを見ると、昨日のことを気にしているようで、普段より表情が暗い。 せっかくのお花見。何か、気分を盛り上げられないだろうか……
「…なぁ、千鶴。俺といて、楽しいか?」 「…え?」 突然思い出したように質問をする土方さん。私の驚きを聞こえなかったと判断したのか、 「いや、なんでもねぇよ。そういやお前、最近元気ねぇな。最近寝てねぇだろ?」 --気付いてた?心配、してくれてたの?思わず、嬉しさが込み上げてくる。 「……悪かった。」 突然強く抱きしめられる。「すまねぇ、泣くほど辛い思いさせてるとは思わなかった。」 知らぬまに泣いていたらしい。 「ち、違い、ます。只、嬉しく、て…」 言いかけた言葉を遮るように再び抱きしめられる。 「土、方さん?」 そっと、顔を上げる。 「今は、泣いてて良い。寂しい思い、させてたんだな。」 思わず、また泣きそうになる。「…そんなこと、ないです。忙しいのに、いつも、気に掛けてくれて、」    「千鶴。」 名を呼ばれ、顔を上げた私と彼の唇が重なる。 「……千鶴、愛してる。」 そう言って、再び彼が、唇を重ねてくる。 彼の言葉に応えるように、私は、彼を強く抱きしめた。 お互いを確かめ合うように唇を重ね、より強く抱きしめ合う私達を……月明かりと夜桜が照らした。

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