rally game.01
□耳鳴りが止まないの
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水戸部夢
いきなり、音楽が止んだ。
「水戸部…、なに?音漏れ?」
彼はこくんと頷いた。音が大きいから耳が悪くなるなんて、そんな優しさ要らないわ。
「周りの音、聞きたくないの。」
……本当は聞こえないのよ。だからあなたを選んだのよ。だって聞く必要がないじゃない。そうよ、それだけなのに。どうしてこんなに私に優しくするの?ひねくれた女の子は嫌いだって突き放してくれたらいっそ楽なのに。
「分かった、外せばいいんでしょ?ヘッドホン…」
抱きしめられたこの温もりも肩や背の水戸部の質量も。何故だか嬉しくなってきたのよ。髪を撫でるその仕草も笑顔も指先も好きよ。そんなこと分かってる。
「あのね、言いたいことがあるの。」
ごめんなさい。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。だけどもう決めたのよ。あなたを悲しませない方法を選ぶ事を。もっとこの心地好い鼓動を聞いていたかった。はっきりと聞きたかった。水戸部の顔をもっとしっかり見たかった。これからも聞いて、見ていたかった。
もうそれが出来なくなるから、さよなら。
「“愛してる”って…言えないなら愛さないで。」
せめて最後には、あなたは悪くないんだって言えば良かった。あぁ、言いたかった。声も涙も力も出ないのよ。私ってば本当に弱虫なんだから。
耳鳴りが止まないの
(遂には君の顔まで見えないわ。)
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フリーリクエストより、璃猫様に書いて頂きました
有り難う御座います!
2012/02/05