rally game.02
□一時の快楽
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花宮夢
テレビの中では男女が唇を重ねた様にしている。喧嘩をして擦れ違った恋人同士が誤解を解いてハッピーエンド。有りがちで、けれどいかにも乙女が好きな恋愛のネタだ。
けどこういうのは実際余り無いだろう。擦れ違って、些細な、なんて事ない事を勘違いして、間違った解釈をして、誤解を生んで破局。友達から良く聞く話だ。
絵に描いた様な恋愛は憧れるかも知れないが、実際はそうも行かない。自分と合う人なんてそう簡単に見つからない。
「お前んなもん見る趣味あったのか」
「…いや、やってたから何と無く見てただけ」
ソファーに膝を抱えて座っていた私の隣に腰を下ろした花宮。ったく、何時来たんだか…。何時も来る時は連絡の一つ位しろって言っているのに花宮は一度だって連絡を寄越した事はない。
独り暮らしをしているから親がどうこうという話は問題ない。花宮は合鍵を持っている。つまり花宮は自由に出入りが出来る。それが少しだけ嫌に思える。
だったら合鍵を没収すればいいが、花宮が大した理由も無いのに返してくれるとは思えない。まぁ、それ程不快ではないからどうでも良いといえば良い。
「なんか飲む？」
「あぁ」
面倒に思いながらも自分から言った事だし仕方ないから紅茶を淹れる。インスタントは楽でいい。お湯を淹れればすぐに完成。花宮の元へ行くと丁度テレビを消した所だった。面白いものはやっていないからね…。
「お前ラフプレイ嫌いっつてたよな」
隣に座ろうとした私を横目で見る花宮。ラフプレイが、ね…。
「…そんな事も言ったかもね」
「はっきりしねぇな」
鼻で笑う花宮を特に気にも止めず、紅茶をテーブルに置く。
「一々細かい事覚えてられないでしょ」
まぁ、言ったには変わりないんだけど…。私はラフプレイは嫌い。何故か。私自身ラフプレイで傷付けられたから以外に無い。けどそれは自分がやられる場合であって、私が傷付かないならどうでもいい。
誰が傷付こうが傷付けようが、私には一切関係のない事。ラフプレイをやめろだなんて事は言わない。それが彼等の戦い方であるならそれでいい。
「…気持ち悪ぃ…」
「何が？」
突拍子も無い事を花宮が言うのは日常茶飯事でもう慣れた事。ついさっきもラフプレイがなんだのって言ったし。紅茶に口をつけるともう生温くなっていた。
「テメェがだよ。嫌いなら何でオレに構う、何も言わねぇ…本心を全く見せないで気持ち悪いんだよ」
嫌そうに顔を歪める花宮だが、私は笑いしか出ない。ふっ、と小さく笑うと花宮が此方を睨む。ああ…怖い怖い、なんて心にもない事を思い肩を上げる。
「言いたい事があるなら言えよ」
嫌悪感丸出しな花宮にやはり私は笑いしか出ない。
「じゃあ反対に聞かせてよ？何でアンタは私に構うの？私の家に来るの？私には花宮が何考えてるか分からない」
それに私は別に花宮に傷付けられた訳じゃないから花宮が嫌いという事ではない。だからといって、好きでもない。花宮も多分そんな感じだろう。
紅茶のカップをテーブルに置くとかしゃりと小さな音を立てる。花宮を見ると不快そうに眉間に皺を寄せていた。
…全く、人ん家に勝手に上がって機嫌損ねるってどうなのよ…。
「やっぱりお前は気持ち悪ぃな…」
立ち上がった花宮を見上げていると不意に肩を押されソファーに倒れる。花宮は私に股がる形になる。所謂、押し倒された状況の出来上がりだ。
下から花宮を見ると先程よりも機嫌は悪そうに見える。影が出来たからかな？
「じゃあ私に構わなければいいじゃない」
敢えて満面の笑みで言うと、更に眉間の皺が濃くなる。けど、どうとも思わないのはこんな花宮の姿を見慣れているからだろう。
…あぁ面倒だな…。この後どうなるかを知っているからこそ、そう思う。嫌いではないが、疲れるし、今は気が余り乗らない。
「るせぇ…」
悪態着いた後に花宮の顔が近付いてくる。それを拒む事無く受け入れる。口と口が重なる。少し口を開けばその隙間から花宮の舌が入ってくる。
こんな行為に意味何てない。ただお互い、すっきりしたくて、ストレス発散の為にやっている様なもの。そこに愛なんてものは存在しない。
何も考えず、我慢何て面倒な事をせずにただ本能に従い求める。快楽を。こういう行為では理性は捨てた方が気持ちが良い。
「やっぱりお前は気持ち悪ぃな…」
「そんなのお互い様なんじゃない？」
天才の考える事は凡人には分からない。逆もまたしかり。だから私が花宮の考えている事を分からない様に花宮も私の考えている事が分からない。
ふっ、と鼻で笑うと花宮も笑う。歪な私と花宮の関係。ただ気の向くまま本能に従い体を重ねるだけ。普通の人には理解し難いこの関係。
他人の考え何てどうでもいい。ただ、自分が気持ちいいと思えるのだからそれでいいじゃない。
一時の快楽
ただ求めて、求められるだけの歪な関係
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ﾌﾘｰﾘｸｴｽﾄより、歩様に書いて頂きました
有り難う御座います！
2012/04/21