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□その6 お見合い狂想曲。
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26歳独身のぼっすんは久々に実家に帰っていた。
彼は父も魔王軍の兵士だという
いわゆる軍人一家の出身である。
「あなた、とうとう軍のトップになったんでしょ?
うちの出世頭よね」
母がにこやかにクッキーを焼いて持ってきた。
ぼっすんの母も、元魔王軍の兵士である。
もう50代になるというのに
ぼっすんから見ても結構美人だとおもう。
「我が子ながら大したものだ」
はっはっはっ、と父はダンディな声で笑う。
ぼっすんの父はツノの生えた毛玉だ。
大きさはキャベツくらい。
「そんなに褒められると照れるよ」
ぼっすんは照れながらクッキーに手を伸ばす。
彼は父から立派なツノを受け継いだ。
それ以外は似なくてよかったと本当に思う。
つーか、毛玉+美人が何故ゴツい大男なのか
未だに解らない。
「あ……そういえば」
ぼっすん母は満面の笑顔を浮かべる。
「あなた、浮いた話の一つもないけど
そろそろ結婚とか考えた方がいいんじゃない?」
来た。
結婚の話題。
「いや、別に……俺、今の仕事で手一杯だし」
ぼっすんも作り笑顔で返す。
「結婚で仕事が出来なくなるのは女だけよ」
母も満面の笑顔だ。
「今付き合ってる人いないんだよ」
にっこり。
「今どころか、ずっといないでしょ」
にんまり。
畜生。
この母親、そんなこと言う!?
そんな真実言っちゃう!!?