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□その4 惨殺魔の帰還。
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→魔王について(軽い説明)。




魔界と人間界の国境付近に、
某国の兵士団が集結していた。

「今日こそっ、人類の繁栄のため!!
あの化物どもを、滅ぼすぞぉおっ!!」

兵長が天高く槍を掲げて叫び、
彼の前に集う100人を超える兵士は、
雄叫びで彼に応じた。

まさにその時、空にオーロラが浮かんだ。

不吉の前触れのように、まがまがしい色彩を帯びたオーロラだった。

「な……なんだ!?」

兵士達が一斉にどよめいた。

誰もが空をみあげるなか、一人の兵士の言葉が更に混乱をよんだ。

「お、お前は誰だ!?」

屈強な兵士たちの視線が、兵士たちの中央に注がれる。

兵士たちの視線の先には、ぼろぼろな服を纏ったダメージヘアーの人物が
幼児を連れて立っていた。

そいつは、兵士たちよりは微かに背が低いが、
自分の背丈をゆうに超える解体包丁を携えている。

そして、ピアスのつけられた耳が、尖っていた。

「ま、魔族か!!?」

「ああ」

突如兵士たちのど真ん中に現れた魔族は頷いた。

手を引かれた幼子が首を捻る。

「人間?」

「ああ、脆弱な生き物だ」

さほど興味なさそうに年かさの魔族が返事をする。

兵長は我に帰り、二人の魔族を
槍の切っ先で指し示す。

「ちょ、ちょうどいい!!
魔界に攻め入る前のウォーミングアップだ!!
殺せ!!」

「はぁん?」

年かさの魔族が凶悪な顔で唸る。

「なんつった?」

「魔王を」

言いかけた兵長を、
ダメージヘアの魔族は遮った。

「うっせぇな、ミナゴロスぞ!!!」

急に殺る気になったそいつは、
口が裂ける様に笑うや、
腰から解体包丁を抜き放つや、
身長を超えるそれを、片手で天高く掲げた。

「エビルデイン!!!」

一筋の漆黒の稲妻が、兵士たちの群れに突き刺さった。

稲妻に貫かれた数人の兵士が卒倒する。

その次の瞬間には解体包丁が鈍い光を放って閃く。

兵士の首が二つ三つと、
いとも簡単にふっとんだ。

噴水の如く血が噴き出し、撒き散る血飛沫の中で、
そいつは蒼い眼を輝かせて笑った。
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