人造人間とはかせ。

異星人襲来。
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居留守作戦。



「博士ぇ、もうばれてるってばぁ」

「うるさい」

「博士ぇ、もう疲れたよぅ」

「俺もだ」

「博士ぇ…」

秀は、クローゼットの中に引きこもった博士の説得をしていた。

博士の放ったトマホークミサイルで異星人を倒した後、政府の人間らしき人が訪ねてきたのだが、博士は5分ほど対応して締め出した。

どうやら面倒な話らしい。

そして博士はそのまま家じゅうの窓という窓に、ドアというドアに特殊合金のシャッターをおろし、連打されるインターホンの電池を抜いて自室のクローゼットに閉じこもった。

そんなわけで、最初から居留守だということはバレバレなのである。

家の中に博士が居ると解っているので奴らも諦めてくれないのだ。

「博士ぇ、無理だよ、もう食料がないよ」

「大丈夫だ、いざとなったら革靴は食える」

「秀は革靴食べたくないよ」

「その前に人肉がある」

博士はけだものみたいな目で出門を見た。

空洞みたいで末恐ろしい目だった。

もう自宅に籠城して丸一日になるのでそこそこ疲弊しているのだろう。

「博士、諦めようよ。
多分籠城するよりは楽だよ」

出門は付き合って籠城するのも面倒なので説得を試みているが、博士は説得に応じる気がないらしい。

「じゃあお前行って来いよ」

「秀じゃ聞かれても解んないよ」

「解んねえんなら口はさむんじゃねえよ」

博士はクローゼットのドアを閉める。

どれだけ心の壁をつくっているんだろう。

「はぁかぁせぇ」

それでも出門は懲りずにクローゼットのドアを叩く。

「博士ってばぁ」

ガラッとクローゼットが開き、博士は出門に一撃食らわせるとそのままクローゼットに引っ込んだ。

「ど、どうして博士…」

「うるせえ、今度やったらアッパーカットだぼけが」

「このDVインテリがぁぁあ」

出門は唸ってみるも、もう一度殴られるのは嫌なのでクローゼットのドアを叩くのはやめた。

博士も政府の人とやらも良くもまあ根気が続くもんだよ、と思う。

が、その時。

ガギャギャギャギャギャ!!

「へぇあ!?」

突然鳴り響く金属音に、出門は怯えた小動物の如く辺りを見回す。

「なんだオイ!!」

明らかにキレた博士がクローゼットから出てくる。

「解んねえよ、急に…」

ガギャギャギャギャギャ!!

「くそ、お前じゃねえのかよ」

博士は設計図やら図鑑やら専門書の山積みになったデスクの上のパソコンを起動する。

玄関の防犯カメラに繋げると、そこには巨大なチェーンソーか電動ノコギリみたいなもので合金製のドアをぶった切ろうとする政府の人がいた。

「きょ、きょうこうとっぱ!?」

出門は火花を散らすドアとデンジャラスな機器に悲鳴を上げる。

「ディスクグラインダーかよ卑怯者!!!」

博士は悔しそうに地団駄をふむ。

ダイヤモンドカッターでも使っているのか、ドアの寿命は尽きかけている。

「くっそ、俺は有言実行だ!!」

はかせは手近なところにあった工業用のダイナミックハンマーを手にして颯爽と部屋を出た。

「は、博士!!」

流石に犯罪行為は止めようと思って出門も追ったが、間に合わなかった。

玄関のドアはすでに破壊され、きっちりとスーツを着込んだ政府の人そこに居た。

そして正面に立つ博士は異様な殺気を放っている。

「あ、博士、昨日異星人を撃退したロボットについてですけど」

「ロボットじゃねえよ!!!」

博士は渾身の力で政府の人にダイナミックハンマーを叩き込んでいた。

本当に有言実行だった。

でも、意外と博士って馬鹿かもしれない、と出門は気づいた。

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