人造人間とはかせ。

異星人襲来。
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裏の榊原。




博士は国家権力に連れて行かれた。

国家権力といっても警察だ。

政府の人をダイナミックハンマーでまともに殴ったので当然のようにパトカーにドナドナされていった。

出門はそれを見送るしかなかった。

博士がドナドナされてからもう一日たつ。

あんな性格破綻者でも毎日家事をこなしていたので、出門は自分でご飯を作るはめになった。

出門は警察にドナドナされた博士の身元引受人になろうと頑張ったが、どうやら人造人間らしい出門には戸籍がないらしく、そういった保証人にはなれないらしかった。

微妙に詰めが甘い人だ。

しかし、博士は最初から出門など当てにしていなかったらしい。

一応博士にも親はいるのでそっちを頼ってるらしい。

意外である。

あの性格破綻者も人の子なのだ。

「はあ」

一人だと何をしていいかわからない。

出門は博士以外に頼れる人間なんていないし、博士以外の知り合いがいない。

もう少し記憶とか常識とか人脈とか、そういうところも作りこんでほしかったな、とか思う。

一人でニュースを見ながら考えていると、インターホンがなった。

「は、博士!?」

出門は、飼い主の帰宅を待ちかねていた子犬のように玄関に走った。

防犯カメラやドアスコープがついているのにろくすっぽ確認もせずにドアを開ける。

「………はか…せ………」

出門の声はもにょもにょと消え入った。

玄関の外に居たのは博士ではなかった。

「どぉも〜、馬鹿居る?」

サングラスをかけた男だった。

多分博士と同じくらいの年のころである。

ミリタリーコートを羽織り、ダメージジーンズとエンジニアブーツを履いた黒髪の男だ。

手にはスーパーの袋を下げている。

「ばか………?」

「頭のいい馬鹿」

「は、博士のこと?」

「ああ、そ〜いやあいつ博士号とかとってたんだっけ。
そいつそいつ。
昨日ダイナミックハンマーで男の人殴打してたじゃん?
大丈夫な訳?」

彼はあの光景を知っているらしい。

まあ、今朝には近所にこの話は知れ渡っていたので仕方ない。

それにもともと博士は近所で変人とか浮世離れした人とかマッドサイエンティストとか有名だったのだ。

「だ、だめだよ。
警察に連れてかれてる」

「ああ、やっぱ」

男は特に慌てるそぶりがない。

ごく普通に話しかけてくるが、出門はこの男が何者なのか解ってない。

「あの、あなたは……」

「俺は裏の榊原っていう家に住んでる……」

「榊原さん…。
博士の友達?」

榊原は頷く。

「まあ、幼馴染って奴?」

そういえば博士は庭に出て、家の裏手で誰かと話し込んでいることが多々あった。

きっとこの男が相手なのだろう。

「で、あいつは警察に行ってるんだね、解った」

榊原はそれが知りたかったようだ。

出門は俯いて頷く。

しょぼくれた出門を見て、榊原の口元が笑った。

「気にすんなよ、あいつもともと前科持ちだから」

博士、もともと犯罪者らしい。

短時間話しただけなのに、出門は自分がどれだけ博士を知らないのかを思い知らされた気がした。

「えっと、博士のお父さんとは連絡取れないらしくて身元引受人がいないらしくって」

「元夫は?」

「さあ、そこまでは……」

本当に博士の事を知らないので出門は答えようがない。

榊原はふ〜ん、と頷く。

サングラスをかけているせいで表情が読めない。

少し間をおいて、わしゃわしゃと髪を掻きあげた榊原は溜息をつく。

「俺が行くか」

「はぁ」

「あいつも可哀そうだし引き受けに行ってくるわ。
あ、これ」

と、榊原は手に持っていたスーパーの袋を出門に押し付けた。

「はぁ」

中身を覗くときのこ類のようだった。

「それ晩御飯用に持ってきたんだけど天麩羅か何かにしててよ、晩御飯までには馬鹿連れて帰ります」

そう言って榊原は手を振ってからスタスタと去って行った。

今まで出門がお使いで頼まれていなかった物が食事で出てきたのは榊原から貰ってたからなのか、と合点がいった。

榊原は天麩羅にでもしろと言っていたが、家事を引き受けている博士は不在だ

まさか自分に調理しろというのか。

出門には料理スキルが一切ない。

そこらへんもちゃんと作りこんでほしいと思った。
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