短篇集
□雪うさぎ
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「一さん。」
縁側に座って外を眺めている一さんに声をかける。
「ご飯の支度が出来ましたよ。」
声をかけても、一さんはこちらに来ない。
「一…さん?」
もう一度呼びかけると一さんはチラリとこちらを向き
「千鶴。」
私の名前を呼んだ。
「どうしたんですか?」
私は、縁側の方へ歩いて行く。そして、一さんの隣に腰かけた。
そして、外を見て気付いた。
「…雪…。」
そう。雪が降っていたのだ。
「もう…こんな季節なんですね…。」
「ああ。」
一さんはそう言って外に手を差し出した。
手のひらに雪がはらりと乗り、溶けて見えなくなる。
「明日は積もりますかね…?」
「…この勢いで降っていれば、積もるだろうな。」
そう言った一さんは、少し嬉しそうだった。
「ご飯の支度が出来てますよ。」
私はそう言って一さんに微笑みかけた。
「わかった。夕餉にしよう。」
一さんはそう言って立ちあがった。
それから二人は、夕食を食べた。
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