恋ノ唄

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「ヒッ!デビット、そんくらいにしなよ!」



「あ?別にこれくらい避けてんだからいいじゃねーかよ」


ちらり。
デビットがジャスデロを見たその瞬間。

一瞬の隙ができた。



(―…チャンス……!)


「………ハッ――!」



反射的に伸ばした腕は、デビットの脇腹を掠っただけだった。

「――ってぇーっ…!!」



それでも、効果はあったらしい。


「ヒッ!デビット、春花泣いちゃったよ!」



「……え………?」


ジャスデロの言葉を聞いて、頬に手をやると。

僅かに濡れた指の先。


「げっ」


「デビット、春花に謝りなよ!」


違う。
攻撃されたことが悲しいんじゃなくて。
切れた頬が痛いんじゃなくて。


(きっと、あたしは二人に会いたかったんだ)


――二人の姿が懐かしすぎたから。



「あのね、デビッ「春花ー!?どこですかーっ!!」――…っ…」


アレンの声。
きっと、帰りが遅いから探しにきてくれたのだろう。


それを聞いて、無意識のうちに伸ばしていた手を、慌てて引っ込めた。



「チッ、邪魔が入ったな」


「ヒッ!またね、春花!」



一瞬でその場からいなくなってしまった二人。

なんで?
あの時みたく、すぐにいなくなってしまう。



(一緒に、いちゃダメなのかな――…)


―ダメだ。
そんなこと考えちゃいけない。

あたしはエクソシストで、あっちはノアなんだから。

いつか必ず戦わなきゃいけなくなる。


「―春花っ、」



「あ…、…アレン……」


「遅いから探しにきたんですよ。
どうかしましたか?」



「あ、ううん。
誰か知り合いに似ている人がいたから…でも人違いだった」


「そう…ですか……。
じゃあ戻りましょう。神田も心配してますよ」


神田が心配?
それはないだろと思いつつ、アレンに手を引かれて森を出た。









(懐かしいあの頃には)

(もう戻れない)

(なんとなく、そう感じた)
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