灰男

□好きだった。
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「おはようラビ!!」


いつもと変わらない朝。


起きて、着替えて、ラビのもとへと走る。

そんな、いつもと同じ朝。


―――ただ一つ、違ったのは。

あなたの言葉。

「………なぁ、」

「なぁに?」


これから言われることは、想像できるハズもなかった。


「もう、俺に構うな。」


時が止まった、気がした。

周りの音は消え、視界は真っ白。

そんな中、ラビの声だけが響いて、ラビだけがカラフルに見えた。


「…………え、なに…、ラビ、なに言って……」

「だから、春花と一緒にいるのはもう疲れたんさ。だから、」

もう構うな。


さっきと同じことを言われ、理由を聞くこともできず、部屋を出た。


自然と涙が溢れ出てきて。

こんなにもラビを好きになっていた。


「―…っふ、う……っ…―」

自室に戻り、声をあげて泣いた。


ラビが好きだった。

『好きだよ』なんて言えば、困ったように笑って。

それでも、ラビを見かけたらたくさん声をかけるようにして。

ケガをしたら、真っ先にお見舞いに行ったり手当てしてあげたり。


―――そういうのがイヤだったのかな。


でも、少しでもラビの目に止まりたくて。

時折見せる、寂しげな表情を見て、惹かれた。

その理由も聞きたかった。


でも、

「……そっかぁ……。うざがられてたのか…。
へへっ、あたしバカみたい。」

そんなことにも気づかなかったのか。

バカだなぁ。

「…ほん、と…っ―バカ…ッ……っふ、…」


もう、やめよう。

ラビを好きでいるのはやめる。

―――今は辛いけど、きっと、これも思い出だと、言える日がくるよね。




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