灰男

□今を生きて。
1ページ/1ページ






「ねぇラビ。

あたしが今、ここにいる理由はなんだと思う?」



ふと、彼女がそう聞いてきた。

隣に座って。
―表情は、見えない。




「んー、そうさねぇ……まぁ言っちゃえばアクマを見つけるタメ、とか…?」



「でもさぁ、それってあたしにしかできないコトじゃないでしょう?


ラビや、アレンや、リナリー…そして神田達エクソシストに代わりはいない。

でもあたしの代わりはたくさんいる」



それを聞いて、あぁ、と納得した。


彼女は『理由』がほしくて。

でも。


彼女の望む『理由』は見つからないんだ。




「あたしね、自分が誰だかわからなくなるの。

―感情は、捨てた。

表情は、作り物。

本当のあたしはどこ?
ここにいる理由は?」


生きる理由がほしくて。


それが見つからないから、探すのに。



きっと彼女は。


「でも、春花達がいるおかげでアクマを見つけることができて。


それでまた誰かを救えるんさ」

まだそれを見つけることができていないんだ。


「――…あたし、『誰かを救いたい』とかそういうキレイな感情、あんまり持ってないよ。


ただ、自分が満足したいだけ」


嗚呼、またそんな諦めたように笑って。



きっと誰よりもキレイな『ココロ』を持ってるのに。


―できるなら、俺がここにいることが、キミの理由になってほしい。


俺がいるからキミがここにいて。

キミがいるから俺がここにいて。



そんな理由じゃダメ?


そう聞いたら。


彼女の望むリユウではないけれど。


「…そうね、そんな理由もいいかもしれない」



彼女が『今』を生きるタメの理由になれば、それでいいだろ?


明日になったら、また明日を生きるタメの理由ができるから。



―そしてそれは。

俺が生きるタメの理由でもあるのかもしれない。










(理由のタメの理由)

(そして理由に生きる)

(理由があるなら)

(生きられるでしょう?)
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ