アイユメ
□Q7
1ページ/1ページ
「おっはよー、美夢!!
ってアンタその顔何!?どうしたのよ!?」
「…………えへ。」
驚いた顔のあんな。
まぁムリもないでしょう。
だってあなたが朝、友達の顔見たらガーゼで1/4覆われてて、しかも手足のところどころに包帯巻いてあったらどうします?
そりゃあ驚きますよね。
うん、あたしも驚く。
「えへ、じゃないっ!!
で、一体どうしたのよ!?」
「……か、階段から落ちまして……」
「…………ウソでしょ。
ホントのこと言いなさい。
ま、大体の想像はつくけどね。
大方、黄瀬君絡みでしょ。」
「違うよ?
ホントに階段から、」
「ホントのこと言わないと怒るよ?」
こっ、怖い!!
あんな、怖いよ!!
今にも胸倉掴まれそうな勢いで。
やっぱりあんなに嘘は通用しないか。
でも今はとりあえず、
「………後で話すよ。
5時限目、抜けれる?
放課後は部活あるから、時間とれないし。」
「ん、おっけ。じゃあ5時限目屋上ね。」
「はいよー」
約束をして、学校に向かう。
また絡まれたらどうしよう。
そしたらまためんどくさいことになるかな。
+++
「おはよッス、美夢サン♪」
「っわ、びっくりしたぁ………あ、おはよう、黄瀬君。」
「………大丈夫ッスか、」
「え?あぁ、コレ?
大丈夫よ。そんな顔しないで。
黄瀬君のせいじゃないってば。」
あたしの顔を見た瞬間、黄瀬君の表情が変わった。
多分、自分のせいだと思ってる。
「………でも、」
「大丈夫だってば。そんな泣きそうな顔しないでよ。
あたしが泣かしたみたいじゃない。」
苦しそうな顔で、あたしの顔を見つめる。
黄瀬君は悪くないのに。
そんな顔、しないで。
あたしが泣きたくなっちゃうよ?
「ほら、教室、行こう?」
「………ん、」
優しく微笑んで、黄瀬君の前を歩き出す。
後ろで黄瀬君がゆっくりと歩くのが分かった。
歩調、合わせてくれてるのかな。
「美夢サン、」
「ん?なーに?」
後ろからかけられた声に、前を見たまま応じる。
その時の声はなんだか力強い気がした。
「次は絶対、守るから。」
「………だからさ、気にしないで、って。
全部黄瀬君のせいなんかじゃないんだから。」
「いや、それじゃ俺が納得できないんス。
何かあったら、ちゃんと言って欲しいッス。」
黄瀬君の。
あまりにも真剣なその表情に。
「………ん、分かった。」
そう言うしかなかった。
(この時はまだ、)
(この話を聞いてる人がいるなんて)
(知らなかったんだ)