アイユメ

□Q10
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-ガラッ


朝早く。


「美夢っ!!」


「なにー?」



少し息を切らせたあんなが教室に入ってきた。


どうしたんだろう。
騒がしかった教室が、一瞬で静かになる。



「なんか、さっき、不良の先輩達がアンタの話をしててっ……!!」


「え、まじでか。やべ、またボコられんじゃね?」



「ばかっ、そんな悠長に構えてる場合じゃ……」



でも決まったワケじゃないし大丈夫、と慌てるあんなに告げて微笑みかけた。


違うの、と泣きそうになるあんな。

あんながこんなになるのは珍しい。



「その時、一緒に男子もいたから、もしかしたら……っ」


―あんなの言いたいことは分かる。
ってゆーか分かっちゃった。


いや、分かりたくないけど。



口を開こうとしたら、

「……ソレ、どーゆーことッスか」


先に誰かが口を開いた。

真上から聞こえたので頭をほとんど直角に曲げてその人を見ると、それは、



「何の話ッスか、……えっと、あんな……サン…?」

険しい顔をした黄瀬君で。


「…………げ」


「『げ』ってなんスか。
……とにかく今のハナシちゃんと教えて」



上から見下ろされ、言葉に詰まった。
今の黄瀬君からは、ものすごい威圧感が出てきてる。



「………言ってよ美夢サン。
俺にもちゃんと言って、って前に話したよね、」


いつもとは違う口調に、少しドキリとして、でもその見下ろすその表情が怖くて。


反射的に足を後ろに下げたけど、黄瀬君がすぐ後ろに立ってたせいで黄瀬君にぶつかった。



そんなあたしの怯えたような表情を見たせいか、少しだけ、黄瀬君は目尻を下げる。


だけど相変わらず威圧感はすごい。


だけど、あたしは今のハナシ、黄瀬君には話したくないんだよね。




――だって、話したらきっと、またあんな顔させちゃう。


「……俺は、美夢サンの力になりたいんス。
だから、話してほしいッス」



「あ……えと、「ごめん、美夢。あたしから話すね」え、」



「…さっき、あたしが廊下歩いてたら女の先輩四人と、男の先輩三人がいて、少し話を聞いてみたら、美夢の名前が出てきたから……」


「………それ、ほんとッスか?」



「うん…内容はよく分からなかったけど、美夢の名前はたしかに何度か聞いたよ」


黄瀬君の顔はさらに険しくなって。

あーあ。
だから言いたくなかったんだよ。




「……ほんとは、あたしがいつでも美夢の傍にいてあげられれば、いいんだけど……」

「じゃあ俺が傍にいるッス。
そっちのほうがあっちも手は出せないハズッスから」



「いやいやいや。
それって黄瀬君にとって迷惑以外の何物でもないよね」


そう言った瞬間、あんなに拉致られた。

こそこそ耳打ちされる。


「何言ってんの美夢。
せっかく黄瀬君がああやって言ってくれてるんだから頼みなさい!!」


「え、でm「頼みなさい。わかった?」……だけd「いい?」…………ハイ」

よし、とあんなは頷いて、また黄瀬君の前にあたしを立たせた。


「オネガイシマス」


「なんで片言なんスか」



「いや、あたしは納得してないから。
だってもしあたしと一緒にいて、そのせいで黄瀬君までケガしちゃったら……!!」


「………俺、そんなに頼りないッスか?」


「ちっ、違うの!!黄瀬君が傍にいるって言ってくれたことはすごく嬉しいよ?
でも、もしそれで黄瀬君がケガしてバスケに支障が出たら、って……。
あたしそれが怖くて、」



焦るあたしを見て、黄瀬君は優しく笑った。


またしてもドキッとしたのは内緒ね。


「だいじょーぶ。俺が傍にいてあげたいんスから」



「うっ……///そんな恥ずかしいことをさらっと……!!」


「どこがッスか?」




「……なんでもない。
んーと、それじゃあ、お言葉に甘えまして、お願いします」


ぺこりと頭を下げたら、満足したように黄瀬君もあんなも笑って頷いた。







(てゆーか逆に美夢サンがいいんスか?)

(え?うん。黄瀬君がいいなら)

(大歓迎ッス!!)

(………はいはい)
 

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