アイユメ

□Q12
1ページ/2ページ




あれから一週間―――


あんなにもとりあえず全部話した。

一回殴られたことは伏せたけど。


「………そっ、か…」

あんなは、驚いたように、でもどこか悲しそうで。


「ごめんね、美夢…あたしなんにもしてやれなくて………」



声を押し殺して泣くあんな。

胸が痛んだ。


「ちょ、泣かないでよあんな。

あたしなら大丈夫だって。
黄瀬君が助けてくれたし……それに、一人だけ、謝ってくれたの」


「………え…?」



「なんか黄瀬君が怒って、そいつらが逃げてく時に一人だけ謝っていったんだ。


…その人は、多分あんまり悪い人じゃないと思うんだよね」


「…でも美夢を泣かせたよ」


それでもあたしは、あの人は悪い人だと思えない。

あの人は最初からあたしに危害を加えようとしてたワケじゃない。

床に叩きつけられた時だって間に身体を滑り込ませてくれた。


「でも、」


「大丈夫だよあんな。
あたしはほんとにもう大丈夫だからさ」



「………あたしは、その時美夢の近くにいてあげられなかったことが悔しい……っふ、……っく…ぅ……」


「もぉー、泣かないでってばぁ、あんなー。

別に、その…未遂だった、し……」


……こんな時にアレだけど、あたしの為に泣いてくれるあんな。
あんな以上にあたしを思ってくれてる人はいないんじゃないか、って思えてくるよ。

「………美夢、」



「なに?」


「アンタ強がってるけど、ほんとは男怖いでしょ。

…ってゆーか、怖くなったでしょ。
見てれば、分かる」


「……―…っ……」

ふいに強い声で言われ、言葉につまった。

だってそれは。


「見てればさ、美夢は男子を避けてるんだよね。
ふいに触れた時も、どこかビクついてた」


ほんとのことだから。


「はは…やっぱあんなにはかなわないや。バレてたか」


「当たり前でしょ。
……あたしに隠し事はなしよ?」


「う、ごめん」



そう言って、それから微笑む。

―二人の間を、優しい風が吹き抜けていった。












.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ