アイユメ

□Q14
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「バスケ部の皆さーん、今日はロードワーク3倍なので頑張ってくださいね」


にっこりと微笑みながら言い放ったのは、海常高校バスケ部マネージャー、榛名美夢。

当然、いきなりそんなことを言われた部員達は騒ぎ出した。


「え、ちょ…美夢ちゃん……なんで?」



さっさと部室を出て行こうとした榛名の足が、ぴたりと止まる。


……森山、お前もしかして聞いちゃいけないことを聞いたんじゃ……



「「「「「!」」」」」


ゆっくりと振り返った榛名の顔は、笑顔だった。が。

背後には間違いなく鬼がいる。

……正直言って、怖ぇ。



「えー、昨日部室の掃除をしたところ、こんなモノが見つかりました」


バサッとこちらに投げられたのは――

まぁ、俗に言う、エロ本ってヤツだ。


………誰だこんなもん持ち込んだ奴。

榛名じゃなくても怒るな、コレは。



「学校に持ってくるところまでは目をつぶりましょう」


あ、持ってくるのはいいんだ。


「――――ですが、」



「「「「「「……」」」」」」



「部室のロッカーに大切そうにしまっとくんじゃねぇぇえっ!
燃やすぞコラ。あ?」


違う、こんなの榛名じゃねぇ。

いつもの榛名は、もっと大人しくて、気配りが上手くて……


少なくともこんな冷たい瞳で俺らを見るような奴ではない。


「―ということですので。
皆さん、逝ってらっしゃい」


榛名は校庭を指差し、死の宣告をした。



今の榛名には誰も敵わない。

半分泣きそうになりながら、部員達はよろよろと外に向かった。



「……今日は差し入れあるので頑張ってください」


後ろから聞こえてきた声に振り返ると、少し顔を赤くして、いつものようにふわりと笑う榛名がいた。



今の一言でやる気を出したらしい奴らは、我先にと体育館から出て行った。


………俺らのこと扱い慣れてんな、コイツ。



「………差し入れ、ありがとな」


「え?あ、いぇ……あの本も差し入れも口実ですから…」



「………?」












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