復活

□最後のさよなら
1ページ/1ページ






「ねぇあんな、俺のこと好き?」


ふと、呟くような声で綱吉に聞かれた。

「当たり前じゃん。
いまさらそんなこと聞かないでよね」


答えるのが恥ずかしくて、綱吉から目を離した。

だから、答えた後の綱吉の顔は見えていなくて。


「そう……」

綱吉の悲しげな声で、顔を上げた。



「じゃあさ、どれくらい好き?」



そんなの、聞かなくても分かってるくせに。

――なんでそんなに泣きそうなの?



「……言葉じゃ、言い表せないくらい、好き。
あたしは、綱吉がいればいい」


「………じゃあもし、もしも俺がいなくなったらあんなはどうする?」


この時あたしは、何も考えずに答えた。

綱吉の表情のワケも知らずに。

心の中ではなんとなく、綱吉はいなくなっちゃうんだ、って思ってたのかもしれない。

でも、そんなこと考えたくなくて、何も考えないようにして。


「………すごく、悲しいよ。
きっと、綱吉がいなくなったら、あたしの胸にぽっかり穴が開いちゃう。
ずっと綱吉の隣にいたいし、綱吉にも隣にいてほしい」



「…………」


「……あたし達はまだ高校生で、でも、中学生の時からあたしは綱吉の隣にいたんだよ?
綱吉がいなくなるなんて考えられないよ」



「……うん、」


俯いた綱吉から絞り出したかのような、声。


それを聞いた瞬間、勝手に体が動いて、綱吉を抱きしめていた。



「………あんな…?」


「ねぇ、そんな顔しないでよ。
あたし、綱吉には傍にいてほしいけど、それが綱吉の『これから』のことで負担になるなら、綱吉から離れるよ。

あたしね、綱吉の負担にだけはなりたくないんだ」



「………負担なんかじゃ、ないんだ。
でも、あんなはやっぱり、連れて行けないから、だから、」



「………やっぱり。
どこか行っちゃうんだ」


ぽつりと呟いた声は、自分でも驚くほど震えていて。



マズイ、というように綱吉が顔をしかめた。


「あ……その、」



気まずそうに、俯く綱吉の顔を両手で包む。


驚いたように一瞬だけ反応して、でもすぐに肩の力を抜いて抱きしめてくれた。



「綱吉、もし綱吉がここからいなくなっても、あたしは追いかけるからね。
外国なんて行っちゃっても追いかけるんだから。
…やっぱり、あたしには綱吉が必要だし、一緒にいたいから。


いずれあたしが綱吉の負担にならないようになれたら、その時は会いに行く」



だから、待ってて。


そう笑ったら、綱吉は少しだけ表情を崩して、ごめんと呟いて抱きしめる腕を強めた。




―――その日から、二ヶ月後。


綱吉は姿を消した。

あたしに何も言わずに。


綱吉のお母さんに聞いて、その後はたくさん泣いた。




あたしは知ってたよ、綱吉。


綱吉がマフィアで、10代目になんなきゃいけなくて。

でも優しい綱吉のことだから、いっぱい悩んだんだよね。

マフィアなんてできない、って。


仲間が、友達が傷つくのがイヤなんだよね。


だから、綱吉が行っちゃうのは分かってたよ。




―――いつか、会いに行くから。

その時まで、どうかお願い。

待ってて。

生きて、待ってて。






(どこにいるのかはわからない)

(でも、きっといつか)

(会いに行くから。)
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ