復活

□最後のさよなら
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「ねぇあんな、俺のこと好き?」



小さめの声であんなに尋ねる。

聞こえてたかどうか不安だったんだけど。



どうやら聞こえてたみたいだ。

ぱっと振り返って、恥ずかしそうに、でもちょっとはにかんで。


「当たり前じゃん。
いまさらそんなこと聞かないでよね」


少し、顔を紅くしたあんな。



……こういうところがすごくかわいく思える。

あんなと出会えて、よかった、って。



「そう……」

必死に絞り出した声は、今にも消え入りそうなほど小さい。


そして、微かに震える手。


「じゃあさ、どれくらい好き?」



本当は、分かってる。
あんなが何て答えるかくらい。


「……言葉じゃ、言い表せないくらい、好き。
あたしは綱吉がいればいい」


――あ、なんか泣きそう。

あんなの言葉が、胸にのしかかる。



「………じゃあもし、もしも俺がいなくなったらあんなはどうする?」




ワケが分からないというような表情で。


だけど、不安げなその顔を見て、しまった、と思った。


それからあんなは少し考えて、ゆっくりと口を開いた。




「………すごく、悲しいよ。
きっと、綱吉がいなくなったら、あたしの胸にぽっかり穴が開いちゃう。
ずっと綱吉の隣にいたいし、綱吉にも隣にいてほしい」



「…………」



「……あたし達はまだ高校生で、でも、中学生の時からあたしは綱吉の隣にいたんだよ?
綱吉がいなくなるなんて考えられないよ」




「……うん、」



なんだよ、俺よりあんなのほうが泣きそうじゃないか。



あんなには泣いてほしくないんだけどな。



俺が一番嫌いなのは、あんなが泣くことなんだ。



「………あんな…?」




いきなり抱きしめられた。

一瞬、泣き顔を隠そうとしたのかと思ったけど、どうやら違うらしい。



むしろ泣きそうなのは俺で、声は震えてるし、手は血が滲みそうなほど強く握りしめてた。



「ねぇ、そんな顔しないでよ。
あたし、綱吉には傍にいてほしいけど、それが綱吉の『これから』のことで負担になるなら、綱吉から離れるよ。

あたしね、綱吉の負担にだけはなりたくないんだ」


「………負担なんかじゃ、ないんだ。
でも、あんなはやっぱり、連れて行けないから、だから、」



我ながら言い訳じみたことを言っていると思う。


だけどそれは全部本当で。



あんなは負担になんかならない。

俺だって、ずっとあんなと一緒にいたいんだ。




「………やっぱり。
どこか行っちゃうんだ」



ぽつりと呟かれたその声は。



一瞬、泣いているんじゃないかってくらい、震えていた。



「あ……その、」



―――しまった。
今のは言うべきじゃなかった。



気まずくなって、俯く。
あんなの顔を見ることができない。




―突然、あんなの小さな手が両の頬に触れた。

そして、包み込むように優しく撫でる。




無意識に、あんなのことを抱きしめていて。



「綱吉、もし綱吉がここからいなくなっても、あたしは追いかけるからね。
外国なんて行っちゃっても追いかけるんだから。
…やっぱり、あたしには綱吉が必要だし、一緒にいたいから。


いずれあたしが綱吉の負担にならないようになれたら、その時は会いに行く」



だから、待ってて。



そう言って、あんなはやさしく微笑んだ。


俺は、ごめん、って謝ることしかできなくて。

あんなを抱きしめる腕を強くした。







―――それから、二ヶ月。


俺は、あんなに何も言わずに日本を出た。


行き先は、イタリア。




ダメツナ、って言われてる俺でも、仲間のことは守りたいんだ。


―そして、あんなのことは、危険に巻き込みたくないんだ。




本当は行きたくなかった。
俺だって、ずっとあんなの傍にいたかった。




でも、ごめんな。





もっと強くなって、俺一人でもあんなを守れるようになったら、俺があんなに会いに行くから。




――だから、待ってて欲しい。
本当はこんなこと言ってちゃいけないけど、俺はあんながいなくちゃダメだから。









(いつか俺が)

(君にふさわしくなれたら、)

(その時は俺が、君に会いに行く。)
 

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