復活
□泣き顔なんて見たくない
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「ひっく……た、けし…」
泣きながら抱き着いてきたのはあんな。
慌てて抱きしめ返して、その小さな身体が震えているのに気づく。
どうした?とできる限り優しい声で尋ねると、あんなは小さく呟いた。
「夢をね、見たの。
武が死んじゃうゆめ。
明日の任務で、遠くから敵に銃で撃たれてね、死んじゃうの。
すごいリアルで、」
そこまで言って、またぼろぼろと涙をあんなは流した。
「明日結構キツイ任務だって俺が言ったからそんな夢見ちまったんだな」
ごめんな、って言ったらあんなは黙って任務に行っちゃうほうが悲しいよ、そう言ってきゅう、と強く抱き着いてくる。
「(…かわいすぎる。あーもー襲いたくなっちまうじゃねーか)」
「武、は……あたしの手の届かないところに行かない…?」
「あぁ、当たり前だ。ぜってーそんなトコ行かねぇよ」
「武…っ、あたし、武がいなくなったら……!」
「だーいじょうぶだって。俺があんなを残してどっかいけるワケねぇだろ?」
な?と笑いかけてやれば、小さく頷いて、安心したように身体を預けるあんな。
そのまま寝てしまったあんなを抱きかかえて彼女の部屋に運んだ。
サラ…とジャマそうな前髪をどけると、その手を掴んで布団の中に引っ張り込まれる。
いきなりのことでバランスを崩し、あんなの上に倒れ込んでしまいそうになるのをなんとかこらえた。
「(…とは言えこの体制はキツイ……!なんとかしねーと俺抑える自信ねーぞ…!?)」
「んん……た、けしぃ…すーき……」
「!(や、べ…っ…!いやっ抑えろ俺!あんなは寝てんだぞ!?)」
目をつぶったり、顔を背けてみたり、少しでも邪念を振り払おうとするが規則正しい寝息がすぐ傍で聞こえ、どうも上手くいかない。
諦めてあんなを見ると、にへ、となんともしまりのない笑顔で眠っている。
それを見て、なんとなくほんわかとした気持ちになった気がして、さっきまでの思考はどこかへ飛んでいった。
「……あんな、愛してる…」
最後に頭を撫で、額にキスを落としてから任務へと向かった。
「いってくるぜ、あんな」
(今は寝てても、さ)
(俺が帰ってきた時は)
(笑顔で迎えてくれよな)