黒籠

□シスコン兄貴の憂鬱
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「ねー、お兄ちゃん」


「あ?」



「黄瀬さんってカッコイイね」



「はあっ?」




とある土曜日。

そこそこ強豪な俺達の学校は土日でももちろん練習がある。


そんで休憩中に言われたのがさっきのセリフ。



「黄瀬のどこがいいんだよ」


「あー……金髪?と話し方?」


「…?それでどこがカッコイイんだ?フツー顔じゃねぇのかよ」



顔だけなら認めてやってもいいけどよ、話し方とか金髪だとか…妹のことが全然わからねぇ。


「センパイ、飲みモン買って、くるッス。

……って…ちょっ、なんスかそのかわいいコ!!」


「あ、黄瀬さん!!
こんにちは!!笠松美夢です!!よろしくお願いします!」



「……!!センパイの妹ッスか!?」


わりーかコノヤロウ。
どうせ似てねぇよ。


つーか近付くんじゃねぇ。
俺の美夢が汚れるだろうが。



「はい!!」
オメーもそんな笑顔振り撒いてんじゃねぇ。


そんなことしてると……



「…笠松……!!なんで黙ってたんだ?」


ホラな。
森山まで来るだろ。



「笠松、今度から試合に美夢ちゃん連れてきて。
俺美夢ちゃんの為にシュート決めるから」


「わぁ、ありがとうございます!
森山さんの活躍楽しみにしてますね!」



「……とりあえず…お前、黄瀬はやめとけ」


ダメだ。
黄瀬なんかに美夢はやれねぇ。
つーか絶対渡さねぇ。



「え、なんでよっ!
黄瀬さんこんなにいい人なのに!!
黄瀬さんの話し方スゴイ好きなんだもん!!」


「………話し方……ッスか…?」



「あぁそれです!!その話し方がいいんです!!」


………バカかコイツは。



「センパイ、美夢っちは俺がもらうッス」


「そこはキメる所じゃねぇ!!
全然キマってねぇんだよボケ!!」


しかもなんでなにげに『〜っち』つけてんだ!!
アレか!!
お前は俺の美夢を自分のものだと認めたいのか!!
「イテッス!!」


「ちょっとお兄ちゃん!!黄瀬さんイジメないでよ!!」



ぎゅうっと黄瀬に抱き着く美夢。
くそっ、殴れねぇぜ…。

……ってそうじゃねぇ!!


なっ、抱き着いっ…えぇぇぇええ!?!?



「あ、今俺汗かいてるッスよ?あんま近付かないほうが…」


「大丈夫です!!
いつもお兄ちゃんに同じようなことしてるんで!
あー…もう、黄瀬さん、なんでそんなカッコイイんですか!!」


だーっっ!!
黄瀬もさりげなく腰に手ェ回そうとしてんじゃねぇ!!


こんなヤツに美夢をとられるなんて……!!


くそう……お兄ちゃんは悲しいぜ!!



「ね、黄瀬さん。あたしクッキー焼いてきたんですよ。
あ、もちろん皆の分あるんですけど、黄瀬さんに一番最初に渡させてください」


ニコニコとしながら話す美夢はかわいい。
うん、俺の妹かわいい。
だから余計黄瀬なんかに渡すのはなんか悔しい。
いや、兄としてはそれなりの男と付き合ってほしいが。


あ、でもやっぱ彼氏とかつくっちゃったらお兄ちゃん悲しいよ。


「……ダメだーっっ!!
黄瀬、お前なんかに美夢はやらん!!」



「えー、なんでッスかー?
美夢っちはもう俺のモンスよ?
ほら、美夢っちだってこんな俺にくっついてるじゃないッスか」


「えへへー♪」


「ぜってぇーダメだ!!お、お兄ちゃんは許さないからな…っ…!!」


大切な妹をこんなモデルなんぞにとられるなんて恥だ!!


「…美夢……!!俺と結婚するって言ってたじゃないか!!」


「いつの話よそれ!!やめてよもーっ!!」



「センパイ、諦めて美夢っちは俺にくださいよ」



てめぇはさりげなくはいってくんじゃねぇ!!






美夢に釣り合う男はこの俺だけだからな!!









(…お兄ちゃん、あたし妹やめていい……?)

(!!)

(あたしもうお兄ちゃんの妹ムリ)

(なぜだァァァアアッ!!)
 

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