黒籠
□夕暮れと涙とタオル
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―昼休み。
「美夢さーん、」
「はーい、」
呼びかけに反応した美夢はイスを傾けて返事をする。
「3組の人が呼んでるー」
「あ、うーんっ、今行くっ」
一緒にいたグループの子達にちょっとごめんね、と告げて美夢は戸口へと向かった。
お呼び出しというのは、どうやら男子らしい。
二言三言ほど会話をして(小さく聞こえてきたのは、『好きだ』とかなんとか。こんなところで告白なんてしてんじゃねぇよ)、ごめんね、と言う拒絶のコトバ。
ひらりと手を振って、彼女は席に戻った。
「ごめんねー、」
ちょっと困ったように笑いながら、彼女が席に戻った瞬間。
「あ、ねぇ、トイレ行こう」
タイミングを見計らったようにそのグループの一人が立った。
出遅れた美夢は、何か言いたげに口を開いて、でもつぐむ。
外された、と気付いたのだろう。
事実、美夢がいなくなった後、美夢を見ながら何かを言っていて。
改めて女子の恐さを知った気がした。
だって、さっきまで仲よさげに話してたのに、いきなり悪口だぜ?
恐い、そう思うのと同時に、少し信じられなかった。
そのうち美夢は、ふらりと消えて、放課後まで戻って来なかった。
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