黒籠

□二人距離。
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あーあ、最近美夢に会ってないなー。


お互い違う学校だし。
お互い部活忙しいし。

…美夢は俺に会いたいとか思わねーのかなー。


思わねーんだろうなー。

俺ってアイツの彼氏だよな?
とか、そんなことを考えていたら。


-プルルルッ



「んんんっ!?」


いきなり鳴ったケイタイ。
あぶねー、あぶねー。
危うくイスから落ちるとこしたぜ。

さて、誰かな……って…


「美夢!?うわ、早く出なきゃ!!」


もしもし、なんて、少し裏返った声で出れば。



『あ、和成?よかった、まだ起きてた。もしかしたら寝てるかもって思ってたんだけど…』


「まだ夜の9時だぜ?寝てるワケないじゃん」

『まぁ…そうなんだけど……』



ん?なんか声に元気ない?
なんかあったのかなー。


あ、もしかして美夢はかわいいからそれでイジメを受けて……いや、それはないか。

美夢はみんなから可愛がられるタイプだからな。


「んで?どうかした?」



『……あ、の…ぇと、笑わないでよ?』


「んー?当たり前じゃん」



『…急に、声聞きたくなった、とか、』


そんな理由じゃダメ?

そんな風にかわいく言われたら世の中の男はみんなオチるね。

あぁもう。
美夢かわいい。


『…あとね、窓の、そと……』


「へ?………え…な、なんでいんの!?
寒いだろ!?早く家入れよ!!」



『えへへ、和成に会いたくなっちゃって。顔見れたからもういい。
これ以上和成の近くにいったら我慢できなくなりそうだからやめとく』
バイバイ、と手を振って帰ろうとする美夢を、マッハで家から飛び出して掴まえた。

久しぶりに会えたのにここで帰られてたまるかっつーの。


案の定、美夢は驚いたように振り返って。



「ちょっと和成……」


「うわー、久しぶりの美夢だー」



「…………和成…っ…!!」


「っと……どした、美夢?」



勢いよく抱き着いてくる美夢を受け止めて、優しく問いただせば、きゅっと服を掴む美夢。

どうしよう、かわいい。


「……あのね、なんかよくわかんないけど、いきなり和成の声聞きたくなって、そう思ったら会いたくなって、」



「うん。俺も」

「それで、会ったら泣きたくなってきちゃって……
和成に会うの久しぶりだから、なんかもう嬉しすぎて、っていうか…」



「そっか。
ごめんな、なかなか会えなくて。
きっと美夢はさ、ずーっと寂しかったんだよ。
我慢してたんだろ?お互い忙しいから、って。

でも、俺はお前が会いたいって言ったらすぐに会いに行くから。
だから、溜め込むなよ」



「………うん」


小さく頷いて、小さな声で泣き出した美夢の身体を、ぎゅっと抱きしめた。










(会いたい、会えない)

(二人の間にある距離が、)

(こんなにももどかしいなんて)
 

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