黒籠
□大事なちょこれいと
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「さてさて。どうしたものか」
はい、今絶賛お悩み中の美夢です。
あ、やっぱ絶賛でもないや。
それはさておき、何で悩んでいるかといいますと。
「キャーッ、黄瀬くーん!!あたしのチョコ受け取ってーっ!!」
「ちょっとやめてよ!!あたしがあげるんだから!!」
「黄瀬くーんっ!!」
…………ね?
悩むでしょう?
チョコを作ったはいいものの、黄瀬君のまわりには女の子の壁(半径2メートルくらいかな)ができてて、全然近づけません。
とりあえず他のバスケ部のみなさんにあげますかね。
…笠松先輩や、森山先輩達だって、決してモテないわけではない。
むしろモテるほうだし、チョコもフツーの男子に比べたら、妬まれるくらいに貰えているだろう。
それでも黄瀬君と比べてしまえば少なく見えてしまうのは仕方のないことだと思う。
いや、ホントに黄瀬君はハンパない。
「はい、先輩。ハッピーバレンタイン!!」
「お、サンキュー」
「ありがとう。お詫びにデーt「ホワイトデー期待してますよ、森山先輩」…うん」
うーん……いつになったら黄瀬君のまわりの子達はいなくなるんだろう。
これじゃあ渡せないんだけどなぁ。
…まぁ別に今日渡さなくてもいいんだけど。
「ちょっ、と…っ…、ごめ…っ…」
「や〜ん、黄瀬君どこいくのぉ?」
「黄瀬君、あたしのチョコ貰ってぇっ」
「だから、俺そーゆーのは受け取れないし、受け取るとしたらそれは大事な人からだけなんス!!
悪いけどみんなのは受け取れないッス!!
気持ちだけ貰っとくから!!」
だからどいて!!
とわめき散らしながら、こっちへ向かってくる黄瀬君に少しドキッとして。
いやでもアレだ。大事な人からしか受け取らない=あたしからは受け取らないってことで。
じゃあイミないじゃん。
せっかく作ったのに。
どうしようかな、と所在なさげなチョコをじっと見つめていたら。
スッと横から伸びてきた手にそれを取られた。
「あ……」
「これ、俺にでしょ?
義理でも嬉しいッス!!」
受け…取ってくれた……?
あ、でもマネジだからとかそんな理由なのかな。
そんなちょっとした疑問と落胆は。
「好きな人から貰えるなら義理でも大歓迎ッス!!」
黄瀬君のセリフと素敵な笑顔のおかげで遥か彼方に飛んでいった。
(一日限りの贈り物)
(今日だからこそ)
(意味がある)