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□微かに汗ばんだ髪
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「だーかーらーっ!!待てって言ってるだろ!!」
「ぎゃーっ!!どこ触ってるんですか!!」
「バッ…お前が逃げるからだろ!!」
逃げるでしょうよコレは!!
だって榛名君の顔怖いもの!!
しかも今むむ…胸に手が……!!
「だから逃げんなって!!」
「わわわ分かったからその手を離してください!!
手の動きがエロい!!///」
感触を確かめるかのようにやわやわと動かされた手。
触れたところまではまだ分かる。
いや分かりたくもないけど。
でも手を動かす理由はないでしょうが!!
「お、わりぃ。いや、つい、な。
とにかく逃げんなって」
「……分かったから一回離れてください」
「おぅ」
ずるずる。
漸く離れた彼は、壁に背中を預けて座り込んだ。
「俺、別にお前を怖がらせるつもりなんてなかったんだよ。
お前が逃げるから………」
「うっ……で、でも榛名君の顔が怖くて……」
「仕方ねぇだろ。そういう顔なんだし」
はぁ、とため息をついた彼の髪は、微かに汗ばんでいて。
くしゃ、
前髪をかきあげたその仕草が、どうしようもなく艶やかに見えた。
なんとなく見惚れていると、ふいに顔を上げた榛名君とばっちり目が合ってしまった。
逸らそうにも、逸らせない。
あたしの両頬を包む榛名君の両手のせいで。
「…なぁ、俺のこと、嫌い?」
「え、あ……?嫌いでは、ない……」
「そっか。ならいい」
安心したように微笑んだ榛名君を見て、胸が高鳴ったように思ったのは、きっと気のせいだ。
それから榛名君は立ち上がって。
いきなり抱きしめられた。
一瞬香ったのは、榛名君の、男の子の匂いと、僅かな汗の匂い。
首筋に触れる彼の髪がくすぐったい。
「俺、お前のこと好きだから。だから、」
「……………」
「俺と付き合え」
………はい?
さっきまでの寂しげな顔はどうしました?
今あたしの目の前にいるのは、不適な笑みを浮かべた榛名君。
どうやらあたしは、彼の作戦にまんまと引っ掛かってしまったようです。
(にやりと笑った彼に、)
(不覚にもときめいた。)
(そんなあたしは)
(恋に落ちてしまったようです)