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□キミのなまえ
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「ねぇ榛名、」


そう呼びかけると、彼はあからさまに不機嫌な顔になった。



理由なんて分かりきってるけど。


「…………名前」


あぁ、うん。
なんて、曖昧な返事をして、もう一度榛名、と彼を呼んだ。



どんどん仏頂面になっていく彼にクスリと笑みを零し、ベッドの上に座っている彼の隣にゆっくりと腰かける。


「…なんで名前で呼ばねぇんだよ。
名前で呼べって言っただろ、」


「んー、あたし、元希って呼ぶのも好きなんだけど、榛名って呼ぶ方がもっと好きなの」


「……………」



とん、と榛名の肩に頭を預けて目を閉じる。

それだけで幸せな気分になれるのだから、そのくらい榛名のことが好きなのだろう。

それを伝えたら、彼は顔をわずかに赤らめていた。



「………でも、俺は名前がいい。
他のヤツらと同じ呼び方なんてすんなよ」


「じゃあ、二人の時は榛名って呼ばせて?
たまにでいいから」



「………あぁ」


二人だけ。
そんな空間が心地好い。



肩に頭をのせるだけで分かる、鍛えられた身体。

―プロを目指している彼は、自分のやり方で的確に。
それでありながら正確に身体を鍛えている。


筋肉がつきすぎず、なさすぎず。
そんなバランスのとれた身体をつくるのにどれくらいかかったのだろう。


そんなことを考えているうちに、睡魔が襲ってきた。

「おい、寝んなよ。今寝たら襲うぞ」


榛名にならいいよ。

睡魔と格闘しながらも小さく呟くと同時に、キスが降ってきて。


最後に薄く瞳を開け、榛名の顔を盗み見ると。



「(幸せそう、な、カオ……)」


少し目を細めて、口許を緩ませて頬を赤らめて。

榛名もこんな時間を幸せに思ってくれてたらいいな。



「……好き…だ、よ……もと……き…」


最後まで聞こえたかどうかは分からない。



でも、言わなくてもきっと。











(溢れるだけの想いは)

(確かにあなたへと)

(届いてるでしょう)

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