恋ノ唄

□01
1ページ/2ページ


退屈な毎日――…


「ねぇ桜海さん、今日ちょっと用事があるの。だから、仕事変わってくれない?」



「ん、いいよ」

―嘘。
この間も同じこと言って、男の人と歩いてるの、見たよ。



「ありがとう、桜海さん!!今度なんかおごるね」


「ホント?ラッキー♪」

―早くあっち行って。
こっちに来ないで。


―――いつも変わらない毎日。
楽しいことなんて一つもない。
それでも、最初にバイトを始めた頃は少しだけ楽しく感じた。


でもそれもすぐなくなって。

驚くほど退屈な毎日を、それでも過ごしていた。



+++



「……ふぅ…こんなモンかな。そろそろ帰ろ」

頼まれた仕事を終わらせ、バッグを持って外へ出た。


―ふと、空を見上げるとそこには、清々しいほどの青空が広がっていて。


いらついていたのも、少し収まった気がした。

「空………きれい…」


特別急がなければならないようなこともなかったので、そのままゆっくりと家に向かった。



+++


「…ただいま、なんて言っても誰も返事してくんないけど。――…はぁ…」




結局、いつも通り歩いていれば15分でつくものを30分もかけてしまった。

春花は荷物をその場に置くと、すぐに二階へと上がり、自室のベッドに倒れ込んだ。

そして、首にかかったネックレスに手をかけ、なにかを祈るように瞳を閉じる。



「(―――……父さん、母さん……―)」




.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ