恋ノ唄
□02
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それを見て、最初に気持ち悪くなった。
その後にすぐきたのは恐怖。
見たことのない『それ』。
目はないし、本来なら口と鼻があるべき場所には銃のようなものがついていた。強いて言うならば、鼻と口が捻り上げられた先に銃が取り付けられたような、無理矢理表現するならそんな見た目だった。
「……ゎ、……―っ…!!」
瞬間、その銃が火を噴いた。
幸い焦点はずれていて当たらなかったけど。
とっさにしゃがみ、相手の足を払おうとした。
――…が、
その前に相手の上半身が吹っ飛んだ。
「……………は?」
何が起こったのかわからず、顔をゆっくりとあげると、さっきの人が通常の何百倍もありそうな槌を軽々と持ち上げていた。
もちろん、すでにそれを振り回したような恰好で。
「………やっべぇな。集まってきてる。
なぁ、アンタ逃げたほうがいいさ。
とりあえずどっか家の中にでも……ってどっちにしろもうこっからは出れないか」
緊迫した雰囲気の中、春花はあることに気がついた。
「…なにこれ…ッ…」
なぜかネックレストップであるクロスが光っている。
まるで、彼が持っている大きな槌と共鳴するかのように。
「…なッ…、お前…!」
驚きの表情で、もしかして、と口の中でラビは呟いた。
確認したいこといくつかあるのだが、アクマが集まってきていてそんな時間はない。
「…倒してから確認するしかないってワケさね」
疲れたように息をつき、自身のイノセンスである鉄槌をもう一度振り回した。
まわりにいるアクマ達は触れた者から次々とそれに消されていく。
春花はそれをただ、
呆然と見ていた。
十字架を握ったまま、
ひたすら見ているだけだった。
「………ぅ、あ……」
その凄惨さに、無意識に声が漏らしながら。
薙ぎ倒されていくアクマ達。
散らばる残骸。
ちらほらと公園にいた人達が巻き込まれ、すでに死んでいる者もいれば。
かろうじて息はあるものの、そのまますぐに息絶えてしまいそうな者。
初めて見る景色に、春花はほどなくして意識を失った。
(この時、)
(意識を失っていなければ)
(あんな所に)
(行かなくてもよかったのに)