恋ノ唄

□03
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「―ん………」


春花が目を覚ますと、そこは、ソファーの上だった。

「大丈夫さ?」


最初に視界に飛び込んできたのは赤―。


赤銅色に近い赤。
翡翠色の瞳。

「……ここ、どこ…」


春花は体を起こし、ラビの顔を見つめた。



「ここは俺みたいなエクソシストってのが集まる『黒の教団』ってとこさ」

「―!!…なんで勝手に連れてきたのよ…!!」

「―…ッ…!!」



一瞬ではあるが、春花から発せられた殺気に、ラビは思わず距離をとった。空気が、ビリビリと震えているのがわかる。
本能的な恐怖を感じるのと同時に、ここまでの殺気を放つ彼女に驚きもした。


「………わ、悪かったさ」


「……帰る」

こんなところにはいられない。
というか、いる気もない。
春花はソファーからおり、床に足をつけた。
――が、

「……―きゃ…っ…」



散らばっていた書類でその足を滑らし、転びそうになる。

しかし、間一髪でラビの手が腰に回され、転ぶことはなかった。


「―っと…大丈夫さ?」



「………ありがとう。…もう離して」


馴れ馴れしいのが嫌で、むりやりラビの手をはがす。


ラビは降参とでもいうように両手を上に上げた。


「手を離すのはべつにいんだけどさ…こっから帰られんのは困るんさ」


「そうそう。キミに帰られると僕が困るんだよね〜」


ソファーの正面にあった机からひょいと頭を出した人物。


巻き毛に眼鏡、白い帽子を引っ掛けるように被っている。


「………誰」


「初めまして。僕はコムイ・リー。黒の教団にある科学班の室長だよ」


「そう。ところで、あたし帰りたいんだけど」

自分から聞いた割には興味のない表情で、春花はコムイを一瞥しただけだった。


「そんなこと言わないでよ。
キミには聞かなくちゃいけないことがいくつかあるんだよね。」


少しずり下がった眼鏡を直しながら、コムイという人はそう言った。

しかし、春花からしてみれば、話すことはなにもない。

あたしからは何もないから、と告げて、次は転ばないように扉まで近づき、部屋から出て行こうとした。









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