恋ノ唄
□03
1ページ/2ページ
「―ん………」
春花が目を覚ますと、そこは、ソファーの上だった。
「大丈夫さ?」
最初に視界に飛び込んできたのは赤―。
赤銅色に近い赤。
翡翠色の瞳。
「……ここ、どこ…」
春花は体を起こし、ラビの顔を見つめた。
「ここは俺みたいなエクソシストってのが集まる『黒の教団』ってとこさ」
「―!!…なんで勝手に連れてきたのよ…!!」
「―…ッ…!!」
一瞬ではあるが、春花から発せられた殺気に、ラビは思わず距離をとった。空気が、ビリビリと震えているのがわかる。
本能的な恐怖を感じるのと同時に、ここまでの殺気を放つ彼女に驚きもした。
「………わ、悪かったさ」
「……帰る」
こんなところにはいられない。
というか、いる気もない。
春花はソファーからおり、床に足をつけた。
――が、
「……―きゃ…っ…」
散らばっていた書類でその足を滑らし、転びそうになる。
しかし、間一髪でラビの手が腰に回され、転ぶことはなかった。
「―っと…大丈夫さ?」
「………ありがとう。…もう離して」
馴れ馴れしいのが嫌で、むりやりラビの手をはがす。
ラビは降参とでもいうように両手を上に上げた。
「手を離すのはべつにいんだけどさ…こっから帰られんのは困るんさ」
「そうそう。キミに帰られると僕が困るんだよね〜」
ソファーの正面にあった机からひょいと頭を出した人物。
巻き毛に眼鏡、白い帽子を引っ掛けるように被っている。
「………誰」
「初めまして。僕はコムイ・リー。黒の教団にある科学班の室長だよ」
「そう。ところで、あたし帰りたいんだけど」
自分から聞いた割には興味のない表情で、春花はコムイを一瞥しただけだった。
「そんなこと言わないでよ。
キミには聞かなくちゃいけないことがいくつかあるんだよね。」
少しずり下がった眼鏡を直しながら、コムイという人はそう言った。
しかし、春花からしてみれば、話すことはなにもない。
あたしからは何もないから、と告げて、次は転ばないように扉まで近づき、部屋から出て行こうとした。
.