恋ノ唄
□08
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「……はぁっ、はぁ…っ…!」
ラビはどこに行ったんだろう。
しばらく走ってきたが、どこにも見当たらない。
自分の勘を頼りに、ついに室長室まできたがそこまでの道程でも赤毛の彼を見つけることはできなかった。
「………ふぅ、…」
軽く息を整え、扉を開ける準備をする。
これで誰もいなかったらどうしようか。
-ガチャ-
淡い期待を胸に、扉を開けると、そこに見えたのは赤毛。
どうやら調度コムイにネックレスを渡すところだったようだ。
「―――いた」
ラビの手の中で、翡翠色のネックレストップがきらりと光を反射して輝いた。
それを見た瞬間、それまで焦りだけが胸を占めていたのが怒りに変わった。
春花はツカツカとラビに歩み寄り、ラビの手からネックレスを奪い取る。
「―なんで人のネックレス勝手に持っていったの」
「………イノセンスを武器化するためさ」
「―――なに、言ってるの。
……イノセンスを武器化するっていうのはわかる。
あの小さなイノセンスをラビが持っていたような槌みたくするんでしょ」
ラビに冷ややかな目を向け、無表情のまま、言い放つ。
若干怯んだラビが、それでもこちらを真っ直ぐに見据えた。
「春花はさ、それ大切にしてるだろ。だからフツーに言っても貸してくれなさそうだしなー。
―だから、コムイと話して春花が気がつかないうちに、それからイノセンスを取り出してまたネックレスを返そうと思ってたんさ」
悪いとは思ってるさ。
―と目尻を下げるラビ。
イラついてはいたものの、そこまで強くは言えなくなり、口の中で舌打ちした。
「…なにかあるならちゃんと言って。これは、あたしの両親の形見なの。
だから、勝手に持ってくなんて絶対にやめて。
――ちゃんと、あたしに話して。わかった?」
これでいいだろうか。
きつく言ったつもりもないし、表情だって、それなりに造った。
きっと、これで伝わった。
ラビもコムイも驚いていたが、ちゃんと頷いてくれたように思う。
言うだけ言って、春花は部屋を出た。
「…………悪いコトしちゃったね、ラビ」
「…そうさね。あとでちゃんと謝りに行ってくるさ」
「そうしてあげて」
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