恋ノ唄

□09
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――結局、あれから少し話をしていた。

内容的には大したこともない内容で、ラビが話すのに相槌を打っていただけのような気がしないでもない。少なくとも、春花からは話題を提供することはなかった。


それでもラビの話題は豊富で、飽きることはなかったように思う。


「………春花はやっぱ笑ってたほうがかわいいさ」


「…いきなりなに?」


訝しげに見つめ上げる春花に、ラビはにへ、と笑った。

「いやー、こうやって春花と話してるとさ、春花は結構笑うんだなーって思ってさ。

―…でも、もったいねーさ。ちゃんと笑ったほうが今の顔より10倍はかわいいさー」



―――ちゃんと笑っていた、つもりだった。

柔らかく笑ってみたり、思いきり笑ってみたり。


そんなの全部作り笑いだったけど、きっとラビには、会ったばかりのこの人にはそんなのわからないと思っていた。


でも実際にはバレていたワケで。


「……っ…だってもう、忘れちゃったんだよ?色々なことがありすぎて、一人でいた時間が長すぎて―…。

それでも、ここまで笑えるようになって、それで、…っ…」


ぐいっとラビの胸に引き寄せられ、頭を撫でられる。



「――……ぁ、れ…?」

頭を撫でられた瞬間、涙がぽろぽろと零れてきて。


焦るラビの声が、やけに遠く聞こえた気がした。

「え、ちょ、俺、なんかしちまったさ!?

それとも頭撫でられんのそんなイヤだったんさ!?」


「ちが…っ…あたしも、わかんな、いっ……。

勝手に、出て、っ…」

最後の言葉は喉の奥に突っ掛かって、上手く言葉にできなかった。


春花自身、なぜ涙が零れてくるのかがわからなかった。

服の袖で拭っても、次から次へと涙が出てきた。まるで、今まで流せなかった分を絞り出すかのように溢れてくる涙は二人の袖を濡らしていく。


「……っ、ふ…っ…――…」

「…そんな声抑えて泣くなさ。ほら、こうしてやるから泣くんなら声出して泣くさ」


瞬間、目の前が真っ暗になって、抱きしめられていることに気がつくのにしばらくかかった。

「……なんっ…放し、て……!」

暴れて、どうにかラビの腕の中から抜けだそうとしたが、もちろん、男であるラビの力に敵うハズもなくて。


さらにぎゅうっと力を込められた。

そのせいか、ラビの声が耳元のすぐ近くで聞こえた。













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